EPITAPH東京 (朝日文庫)
EPITAPH東京 (朝日文庫) / 感想・レビュー
さてさて
東京を舞台にした戯曲を書いている主人公(まあ恩田さんのことでしょう…)が、その舞台となる東京の街をさまざまな角度から切り取って、東京という街の実像に迫っていく過程を書き記したこの作品。東京のあんなこと、こんなことと、そのとても興味深い内容に、少し物知りになったような読後が待つこの作品。そんな中に『筆者はここ数年、資料として大量のピアノ曲を聴いているのだが…』という一文に「蜜蜂と遠雷」が出来上がる前夜のトキメキを感じさせてくれたこの作品。とらえどころのないその全容に逆に恩田さんらしさを強く感じた作品でした。
2021/12/21
佐島楓
不思議な作品である。東京が無数の死者たちの上に成っているという前提で進められる、エッセイとフィクション、戯曲までもが混然となった小説。東京の特異性は、ほかの都市や東日本大震災を契機に思い起こされる土地からも示され、日本の特異性へと広がっていく。最後の二、三章の連なりは、突飛なようでいてこの着地点を狙っていたのか、と納得。悪夢は、現在進行形でつづくのだ。
2018/04/25
R
現代を舞台にしたSF小説でした。吸血鬼だと名乗る男、実際にそうであろうと思わされつつ、そのことの不思議ではなく、彼の語る不死性から生きる意味や、生きたあかし、歴史の連なりなんかに思考がとんでいくという物語。とりたてて、何か事件がという話でもなく、人生の意味みたいな、深淵だけども、意味がない思考とも呼べるそれをつなげていくのを楽しめる。何がととらえにくい物語だけど、不思議と読めて、読んだと感触を覚えた読書でした。
2018/10/06
里愛乍
リアル東京を背景に、でもやっぱりフィクションで、それでもあるある風景が描かれた日常で、ならエッセイ風小説かと思いきや間に挟まれた戯曲や視点の違う物語…ここに挙げられている映画やドラマ、小説はほとんどが自分の好きなものだったり興味をそそるようなものばかりで嬉しかったり、一方では吉本新喜劇の面白さがわからないとは、と嘆いてみたり。作品自体が面白い構成で、軽く短編を読むノリで進めつつも全体の深さを楽しめるような奥行きを感じました。
2018/04/24
はるき
恩田さんの創作の引き出しをチラッと覗いた気分。書きたいものをツラツラと並べたみたいな感じでした。素敵ステキ。
2018/04/18
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