星の子 (朝日文庫)
星の子 (朝日文庫) / 感想・レビュー
ろくせい@やまもとかねよし
人間の多様さを読者に問う物語。結論なき結末もユニーク。人間の多様さを、幸福に不可欠な信仰、そんな個人が集う社会の同調性、そして同調を支える慣習の虚構をもちい表現。絶対的虚像で裏打させる信仰である宗教。時代時代で新しく産まれ、一定の人々に幸福をもたらす。一方、このような新興宗教は、過去からの慣習で支えられている社会の隙間を指摘するため、同調から外れた異端として排除される。しかし、生まれた時から新興宗教の社会で育った子供は、それが慣習の社会観をもつ。そんな子供の心境を柔やわに描写。巻末対談も読み応えがあり。
2020/12/09
さてさて
『この小説では「この家族は壊れてなんかないんだ」ということを書きたかったので、ラストシーンに登場させるのも家族だけにしました』、と語る今村夏子さん。そんなこの作品では、新興宗教を信じる両親の元に育つ子供視点から、その内側にある世界がどのように見えるのか、とても興味深い世界を垣間見ることができました。そして一方で、そんな新興宗教という土台の上に展開する物語の中に、お互いを信じ合う家族の深い絆を感じさせる物語。それは、壊れていない家族の繋がりの素晴らしさ、”家族愛”をとても感じさせてくれた、そんな作品でした。
2021/06/19
hit4papa
謎の宗教に傾倒する両親の元に育った少女の物語です。本作品は、新興宗教にのめり込むことの恐ろしさを描いたものではありません。このような家庭に育った少女の姿を通して、価値観が違うものへの向き合い方へ一石を投じているように、自分は受け止めました。深刻さとか悲惨さが殊更表現されていないため、却って読んでいて辛い気持ちになります。ただ、こういう境遇の子というのは、第三者が想像するより、ずっと逞しいのかもしれません。ラストは、賛否あるでしょうね。自分は、両親が敢えて、ちひろとの別離を選んでいるように感じました。
2020/10/27
あきら
意外な終わり方でした。ただ、このラストがきっと良かったんだろうなあ。 時間を止めたり、そのままにすることは生きてるとできないけど、小説ならできる。 本当の結末なんて決めなくていいんだとしみじみ思った作品でした。
2021/10/31
エドワード
日本人は無宗教な人が多い。ちひろは幼い頃に身体が弱く、水が悪い、との父の同僚の薦めで、特別な水を使い全快した。狂喜した両親は新興宗教に入信する。交流会、研修旅行、まだわからない子供のちひろと姉の困惑がリアルだ。本当に水の力なのか、水道水と入れ替え、父母を止めようとする親戚と絶縁する。クラスメイトを集会で見かけ、カッパのような恰好の父母を先生に見られ、とまどいながら過ぎる小中学校。自分がちひろだったらどうする?ドキドキの読書だ。家を出る姉、両親と離れたくないちひろ。両親との愛に満ちた終幕、その後が知りたい。
2020/01/03
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