カザアナ (朝日文庫)
カザアナ (朝日文庫) / 感想・レビュー
さてさて
この作品では『天気に通じる空読』、『虫をつかうことができる』虫読、そして『石の記憶を読む石読』という平安時代に活躍した『風穴』たちの子孫が、近未来の日本でも活躍する様を見ることが出来ました。そんな物語を読めば読むほどに一つの想いが読者にも湧き上がります。『この世界は、人間が思ってるほど人間だけのものでもないみたい』。この世のあらゆるものたちが形作っているこの世界が愛おしく感じるこの作品。ファンタジー世界の描写をお手のものとされる森絵都さんだからこそ描ける近未来の物語世界を楽しませていただいた作品でした。
2022/10/04
ふう
カザアナ。風穴。石を読む石読み。空を読む空読み…。物語は不思議な紹介から始まり、風穴を通って何だか不穏な世界へ連れていかれるのではと思いましたが、そこはやっぱり森絵都さん。通り抜けた先に見えたのは“希望”でした。自分の心に素直に、自然が語りかける声に素直に耳を傾けると、人はもっと謙虚て穏やかに生きられる。そして、世界は変えていけると、柔らかなメッセージが織り込められていました。何より為政者、政治家は穏やかでいてほしいと、今、切に願います。
2022/05/24
chimako
「こんな風になるのも時間の問題かも」とか「でも、これは嫌だな」とか、ファンタジーを読みながら現実と向き合う読書。風穴と言われる一族。自然との関わりが深く対話もできる。その昔は貴族のがこぞって我が物とし、その後入道によって根絶やしにされた哀れで悲しい地の者の末裔が壊れかけた国を何とかしようと近未来の日本で鳥や石や空の声を聴く。そこに関わる外国の血の混じる姉弟とその母。外国人観光客のために過度な日本趣味で作り替えられる街、監視のドローン、国民点数制度。こんな世の中にしないため、今私たちに出来ることは何だろう。
2024/01/21
ピース
平安時代にいたカザアナといわれる不思議な力を持ったものの末裔が現代で繰り広げる物語。地下資源を巡りアメリカ大統領誘拐まで起きる。それでも深刻な話でもないし政治の匂いもしない。それより由阿のは行動力とパワーは頼もしかった。
2022/09/19
dr2006
「私たち日本人はどこへ行こうとしているの?」監視社会化した近未来の日本が舞台のSF。今の日本社会への警鐘が主題だと思った。人口減少、高齢化、インフラの老朽化で八方塞がりの日本が起死回生に目指したのは、日本文化・日本らしさを極端に強調した観光だった。その為にそれまで浸透していた外国の文化を排除していった。極端な政策はやはり歪みを生んでいく。オーバーツーリズムが問題になっている昨今、この物語は全くの幻想とは思えない。リアルに感じた。空を読む、虫を読む、石を読む力をもつカザアナたちが立ち上がる。
2024/08/13
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