老父よ、帰れ (朝日文庫)
老父よ、帰れ (朝日文庫) / 感想・レビュー
のんちゃん
認知症専門医の講演に感銘を受け、好太郎は認知症の父を介護施設から自宅に帰し介護を始める。もう一度父に自分の名前を呼んでもらいたいと願って。だが自宅介護は一筋縄では行かず、近隣の無理解、疲労、そして症状の全く変わらない父に好太郎は疲弊していく。今回、私がこの作品から学んだ事は介護者が自分の希望を被介護者の希望と同一視してはいけないという教えだった。重病に侵された時、被介護者の苦痛を考えれば、死の恐怖もない認知症患者にとって苦しい治療は不要ではないかという事。介護者の気持ちを優先しない介護、難しい問題だ。
2023/09/23
megu
認知症の父を施設から引き取り、自宅介護に奮闘する主人公、好太郎。著者自身、在宅訪問診療に従事する医師であるだけに、誰しもに訪れる、老・病・死の露骨な現実を突き付けつつ、我々に問題提起する。認知症介護に、症状が良くなることや、これ以上進行しないことを期待してはいけない。欲望も執着も捨て、ただ生きてくれているだけでいいと願う、もしも自分が介護する立場であれば、果たしてできるのであろうか。しんみり、涙がこぼれたと思えば、一転、コミカルなラスト。とてもよかった。
2023/04/17
ベローチェのひととき
妻から廻ってきた本。主人公の好太郎は施設に入っていた認知症の父 茂一を自宅に引き取り、自分で面倒を見ることを決意する。介護の悲喜こもごもが全編を通して描かれている。マンションの隣人には色々な考えの人がいたが、それぞれの都合があるのでやむを得ないと思う。個人的な意見としては、施設に入れたままで介護のプロに任せた方が本人にとっても介護する家族にとっても一番いいと思う。
2023/10/29
ゆぽ
以前読んだ『老乱』でも確か「恩返しのつもりで介護する」というテーマがあったような記憶。『老乱』よりこちらの作品はコミカルなテイストですが、問題は切実。主人公の好太郎が右往左往しながら、「自分の都合」と折り合いをつけながら辿る介護の道は、さながら疑似体験のように胸に迫ります。軽妙な雰囲気と深い問題とのバランスが絶妙で、とても読みやすく、読後もしみじみとなりました。
2024/09/03
かずぺん
このようなことを考えなければならない立場になってしまいました。切実な問題ですけど、自分都合で考えてしまいますね。良い教訓になりました。
2023/05/26
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