詩と死をむすぶもの 詩人と医師の往復書簡 (朝日新書 137)
詩と死をむすぶもの 詩人と医師の往復書簡 (朝日新書 137) / 感想・レビュー
うめ
今生きている人の中で、自分はいつか死ぬんだ、ということを自覚しながら生きている人はどの位いるんだろう。私は折に触れて自分はどういう風に死ぬんだろうなどととよく考える。死はけして美しくはないことを知っているから、死の苦しみや孤独についても思いを寄せる。もちろんその日の気分で死に対する考え方は変わるのだけれど。今から死出の旅路に赴くからと行って、全てを赦さなくてもいいんだ、という言葉に打たれてしまった。死は感動的で特別な物ではなく、誰もが一度は経験する、身近でありふれたことなのだ。
2018/08/09
Tui
さきに読んだ『四月の風はつめたくて』の帯にあった「詩と再生の物語」というコピーと谷川俊太郎の推薦文から思い出し、積ん読棚から引っ張り出した臨床医と詩人の往復書簡。臨床医の語る終末期医療の場面は暖かく、ときにユーモラスでさえある。詩人は、哲学や心理学へと思考を巡らせ、毎回一遍の詩で締めくくる。本の内容とは離れるが「詩を基本的にフィクション、少々シニカルに言うと美辞麗句、巧言令色などと考えている」という谷川俊太郎のことばにぎょっとする。独特の照れ隠しなんだろうけど、大御所でないととても口にできないことだ。
2015/11/14
NAO
ホスピス医療の現場は、簡単に言い表せるところではないだろうと思うのに、医師も看護師も、どうしてこんなに明るくて優しいんだろう。どれもが、小説になりそうなエピソードばかり。この診療所では、誰もが、死へとフェイドアウトしていく時間を大切にしていて、その姿勢に胸を打たれる。谷川俊太郎の返書は、重くなり過ぎず、難しい言葉など使っていないのに機知に富み、心にしみる。さすが、詩人。谷川俊太郎の詩も、すごくいい。ただ、読む時と場所には注意が必要。人のいるところでは、読めません。
2015/06/21
Romi@いつも心に太陽を!
図書館本ですが購入候補追加です。ホスピスで常に様々な人の死に接している徳永先生、生き死にを詩に表す谷川さんの二年に渡る往復書簡。ガン、エイズ、うつ病、十人十色の患者さんとその家族。病に苦しむ患者さんも、自らの過去を語る時は、束の間痛みや苦しみから解放され生き生きとする。徳永さんの人柄が伺える内容、谷川さんのどこまでも自由な詩の響き。仄かにユーモアあり、ままならぬ虚しさもあり、笑って泣ける、心に沁みる一冊でした。
2010/10/29
medaka
最近異常なほど涙腺が弱い自分ですが、予想通りにボロ泣き。亡くなった息子を車の助手席に乗せて、生まれ故郷までドライブに行った方のお話。どのエピソードもジワッときたが、この話が最も印象深い。人の優しさ暖かさに、本気で涙が止まらなかった。2人の言葉のやり取りから、気づく事多数。谷川さんの「分かる」「信じる」はナルホドと思った。「分かる」事は簡単だが、「信じる」事は難しい。
2010/03/24
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