2035年の世界地図――失われる民主主義、破裂する資本主義 (朝日新書)
2035年の世界地図――失われる民主主義、破裂する資本主義 (朝日新書) / 感想・レビュー
trazom
コロナ禍、ウクライナ侵攻などを踏まえ、民主主義、資本主義、国民国家、グローバル化、ITの行方を、世界と日本を代表する知性が語る。限られた紙幅での議論ではあるが、資本主義の無道徳性を指摘するミラノビッチ氏、教育の重要性を強調するアタリ氏、公共の領域から哲学者を排除したことの過ちを追求するガブリエル氏の分析に頷く。私には小川さやか先生の論考が印象的だった。「私たち」という概念のあやふやさを問うた上で、「人々はそんなに理解し合わなくてもいい。共存できればいいじゃないか」とする文化人類学者の視点が鮮やかである。
2023/04/17
tamami
近未来の世界と日本の状況、様々な課題をどう読み解くか、4人の世界的著名人へのインタビューとそれに対する二組の日本人の対談を記す。個々の事柄については、私の手に負えず。以下はつまみの印象。インタビューの中では、トッドさんの民主主義は制度だけが辛うじて残っているのみ、という指摘が印象に残る。最終章、東浩紀さんと小川さやかさんの対談が面白かった。東さんの、いま人々は「学び」という言葉の意味がわからなくなっている、学びとは「体験」のこと、それには時間と空間が必要でSNSはそれらを奪っているとの指摘に納得する思い。
2023/04/18
とよぽん
「朝日地球会議2022」に登壇した学者、思想家、作家、ジャーナリストなどによる論考。人口爆発、グローバル化、パンデミック、民主主義、資本主義、インフォーマル経済などなど、これからの世界を地球規模で考えるための示唆を与えてくれる。小川さやか先生の視点が、私にとって新鮮だった。世界のあらゆることは、二元論では語れないし何も進まないと思った。
2023/05/10
Sam
何気なく手にしたが面白い。テーマは表題の通り。まずはエマニュエル・トッドとマルクス・ガブリエル各々ののインタビューが掲載されていて、さらにこの2人のインタビューをもとに意見を交わすのが我那覇潤と市原麻衣子。後半はジャック・アタリとブランコ・ミラノビッチに、東浩紀と小川さやか。編者のいうこの「二段階方式」が効果的だったと思う。個人的にはブランコビッチの経済的不平等に関する見解に興味を覚えた。また、東・小川2人の論評がとても的を得ていていろいろと考えさせられた。いまでしか読めない一冊として、オススメできる。
2023/07/02
confusion_regret_temptation
タイトルとは多少中身が違う印象。副題の方がしっくりきた。登場するそれぞれの方の主張が少しずつ異なるのも興味深かったが、それをまとめつつ意見を述べられた日本の方々の話がとても腑に落ちた。30年くらい前にファジィ制御がもてはやされたが、今のAIにこそファジィ制御が必要になってくるのかもしれない。時代を読むには知識は必要だがそれよりも哲学がとても重要だなと改めて感じた。
2023/05/03
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