神の守り人<帰還編> (偕成社ワンダーランド(29))
神の守り人<帰還編> (偕成社ワンダーランド(29)) / 感想・レビュー
R
神を宿らせる少女を救う物語でした。救うと書いたものの、実際は本人が何を選ぶかというところが重要で、その選択について、バルサの想いと優しさが強い支えとなっていくというところがお話としてとても面白い。国や、民族といった、一見複雑で難しいことに巻き込まれていると思いがちなところに、少女がその立場にいるという悲劇よりも、一人どう生きるかということに目を向けさせるというのが秀逸至極で感動的でした。殺陣も充実していて、毎回思うが児童文学とは何か考えさせられる一冊でした。
2017/07/15
ちはや@灯れ松明の火
国の行末を左右する少女を巡り二人の女が対峙する。片や駒と見做した人間を配置して遊戯盤に見立てた国を変えようとし、片や血の快楽に溺れそうな少女を人の道に引き戻そうとして、其々裡に揺るがぬ信念を秘め。異なる民族、時を経て変質した歴史観、差別、貧富の差、賢明な為政者の奮闘も虚しく国を蝕む不満と不信の亀裂。病み衰えた国家を治めるのに必要なものは恐怖に等しい力か、迂遠で難儀な信頼の構築か。そして神と人との狭間で揺れ動く少女もまた、ひとつの決断を下す。その瞳に浮かぶ景色は凍てつく冬の湖面か、紅い花咲く春の野か。
2010/10/28
Rin
【図書館】怒濤の展開と国の在り方、政治、民族間の問題にまで踏み込んだ内容。読み手も真剣に向き合って読まされる。子どもであるアスラを通して、たくさんの問題を投げ掛けられている。そのアスラに背負わされた問題はとても重たくて、潰れてしまいそうだけれど。でも、バルサが伝えようとしたことや、話してくれた言葉に一緒にいた時間が支えてくれていた。バルサの強さに、タンダの優しさが救い。国はもちろん、ふたりの兄妹の未来が健やかであって欲しい。兄妹が政治や陰謀、策略に巻き込まれるのは辛いけれど成長が眩しかったです。
2016/04/29
Rosemary*
アスラに来訪した神と対峙し封じ込まれた人間としての魂が帰還する。幼き子に宿った怖ろしい力を利用しようと目論む大人たち、殺めることに躊躇いを持たなかったアスラに、体を張って守り抜くバルサたち。尊い決断をしいまだ目覚めぬアスラを胸に抱きながら一面に咲き始めたサユラの花が揺れる野で語るバルサの一言一言が胸につまります。怒涛の後の穏やかさが余韻を残す。
2015/04/17
万葉語り
守り人シリーズ6冊目。それぞれが描く理想像のために、シハナもバルサも命がけで戦っている。ただその違いが多くの犠牲を生んでしまった。民族や宗教の問題まで含んだ児童書。最後のバルサとチキサの会話の場面がすばらしかった。2019-011
2019/01/13
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