ある晴れた夏の朝
ある晴れた夏の朝 / 感想・レビュー
ろくせい@やまもとかねよし
「戦争」を考察させる児童書。米国を舞台に、原子力爆弾投下に対する政治的判断を、15歳青年らに討論させる物語。米国らしく、主人公の8名は異なる出自背景をもたせ、さらにそれぞれの背景でもつ是非の両論を盛り込み、展開させる。昨今、討論をディベートと称し日本人が苦手な自己主張を育む手法と啓蒙されるが、自己主張のみ焦点化するのは大誤解。本書は、討論本来の目的「一定の結論」を互いの主張を尊重し導く正確な描写であったと感じる。結論は正悪二元で得ない。多様な人間同士の結論には、利他的思い遣りから「一定」を探すべきと表す。
2020/07/23
さてさて
アメリカに暮らす小手鞠さんだからこそリアルに展開できる『ディベート』という形式を用いて原爆投下の是非を改めて考える機会を与えてくれたこの作品。とても読みやすい文体が故に重量級のテーマがスッと心に染みてくるのを感じるこの作品。「ある晴れた夏の朝」のことを思い平和へと続く人々の思いは万国共通のものなのだと改めて感じたこの作品。”原爆投下の是非をアメリカの視点から書く”、この作品に込められた小手鞠さんの深い思いを是非多くの人に知ってもらいたい。そう、全力であなたにおすすめしたいと心から感じる傑作だと思いました。
2022/06/25
風眠
戦争をした、という事実は変わらない。その時、その中で、何が行われたか。何があってもおかしくはなかった、と私は思う。戦争という日常は、大きなストレスを生み、洗脳されたように思考がおかしくなる。認めたくない事かもしれないけれど、どこまでも残虐になれるのもまた、人間なのだ。私たち日本人だって、戦争に参加した事を忘れてはいけない。やったやられたの感情論、あやまちを受け止めない自虐史観、教科書の改訂、人種差別。これは、アメリカの高校生が原爆反対派と賛成派に分かれ議論する、ある夏の日の物語。YAだけれど、大人もぜひ!
2018/09/02
へくとぱすかる
広島・長崎の原爆投下の是非について、アメリカの高校生たちが討論会を開く。しかしこれがディベートであることが、物語のカギである。自分の思いとは逆であっても、振り分けられた立場に立って討論する。原爆の惨禍を知る立場としては、どうしても否定派に回りたいところだが、しかし、単純な問題ではないことが、物語の議論の進行とともに、明らかになっていく。現実には結論を出して終われる問題ではない。主人公の高校生たちはより深く問題を知り、自分の問題として生きることになるだろう。異なる立場をわかり合うためには、話し・知ることだ。
2020/03/11
ウッディ
広島と長崎に落とされた原爆の是非について、人種、出自、家庭環境の異なる8人の米国の高校生がディベートを行う物語で、興味深く、感動的でさえありました。戦時中の日系人がドイツ戦線に参加していたことなど、知らないことも多く、原爆を使うことによって終戦を早め、戦死者数を減らしたとする原爆肯定派の意見に、自分ならどのように反論するだろうと考えながら、読み進めました。戦争や原爆の事について考えることが少ない自分を反省するとともに、自分の子供たちにもこの小説を読んで欲しいと思える一冊でした。
2018/11/05
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