金曜日の砂糖ちゃん (Luna Park Books)
金曜日の砂糖ちゃん (Luna Park Books) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
3つの作品を収める掌編絵本。抒情詩の世界である。酒井駒子さんのクールな絵が冴える。絵本だが、どうやら大人向き。漢字にルビはないし、「御執心」などという言葉も。さて、最初の表題作はカマキリの表現が秀逸。次の「草のオルガン」は、芥川の短篇に触発されたか。もっとも、「ぼくはヘビにもあいたかったとおもいました」はオリジナル。最後の「夜と夜のあいだに」の女の子が玄関のドアを開けた瞬間の絵は戦慄もの。幕切れの1文も夜の果てに向かうよう。
2023/07/16
やすらぎ
包まれる愛。喜び合う仲間。舞い上がる希望。その影に隠れる切なさや寂しさ。幻想を求め続けていたい。こんな世界があったんだ。音が出なくてもいい。そこにピアノがあれば。感じ合い、誰かがそこに居てくれれば。もう少し、あと少しでも、このときを感じていたいから。…知っている。踏み出すと、この世界には戻ってこられないことを。知っている。その扉を開けると、守ってくれる人が失われていくことを。みんなの吐息が聴こえてくる。暖かな午後のひととき、今日だけは眠り続けていたい。目を閉じたまま。明日がやって来ることは知っているから。
2022/01/03
風眠
子どもが見ている白昼夢のような、それとも大人が見ている夜の夢のような。そんなフワフワした頼りなげなイメージが漂う絵本。昼間の明るい太陽よりは、夜の闇にほんの少し溶ける月の明かりに似合う。酒井駒子さんの絵には、かわいいだけじゃない、色っぽさとか、背徳的とか、子供の頃は持て余していた気持ちがあるように思う。ノスタルジックで幻想的で、何か重大なことが起こりそうな、起こらなそうな・・・そんな子どもの世界へと誘われる『金曜日の砂糖ちゃん』『草のオルガン』そして『夜と夜のあいだに』の極上の3編収録。
2013/07/11
匠
小さなサイズの、大人向けの絵本。3つの話のうち個人的には男の子が主人公の「草のオルガン」に一番感情移入できたし好きな物語だった。「金曜日の砂糖ちゃん」は表紙になってる絵の女の子が主人公で愛らしく、「夜と夜のあいだに」はそのせつなさと怖さに、主人公の少女の背景とか家族のことをものすごく想像させられる。内容的にもダークで少し物悲しいムードが漂うが、読む時の状況によって捉え方や視点が変わりそうだ。そういう意味で何度も読み返してみたいし、酒井駒子さんの絵のふんわりした優しさと全体的に黒っぽい色使いが魅力的な作品。
2014/04/06
♪みどりpiyopiyo♪
「あたたかで気持ちのよい午後です。女の子がひとり眠っています。」■これね、詩集だと思うの。美しく愛くるしい絵本なんだけど、絵本なんだけど、息をのむような芳醇な幻想詩集。■酒井さんは、子どもの世界を大切に大切に描きます。子どもが一人でいる時間の、光と薄闇、夢と現、あちらとこちら。■歌人の穂村弘さんは『ぼくの宝物絵本』で「どの話にも闇と光の濃密な匂いが感じられる。正確には闇の深さに触ることで生の光が生まれているのだ。」と書いてます。■心の奥にそっとしまっておきたい 大好きな小さな宝物絵本です♡
2016/09/16
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