トンネルの森 1945
トンネルの森 1945 / 感想・レビュー
へくとぱすかる
主人公のイコちゃんと、作者の角野さんとは、かなりの部分で重なり合うのだろうと思う。私は、ほとんど実際の体験として受け止めた。空襲・疎開の体験は、これでもかというほど、悲惨なものが多いが、イコちゃんの場合、とても苦しいし、肉親の運命も悲しいが、絶望には至らず、そこが逆にリアルである。森のトンネルは、暗いけれど、いつかは出口に行けるというシンボル。
2019/05/22
馨
魔女の宅急便でお馴染みの角野さんの戦争体験。児童書っぽくてわかりやすかったです。疎開やおばあちゃんの死、友達との別れ、お父さんの被災、飢え、我慢の日々など幼いイコちゃん目線の戦争のつらさ。周りの人たちはみんな家族が死んだり行方不明になっている。戦争が始まった時は皆歓喜に湧いていたのに。というイコちゃんの思いが痛かった。お父さんが無事だったことが本当に奇跡です。
2015/07/27
chimako
小学生のイコが観た戦争。気持ちの浮かない父の再婚に始まり、継母との気持ちの通じ合わない毎日や父セイゾウさんに対する愛情と安心の日々を描きながら、日中戦争から第二次世界大戦、敗戦までを率直な子どもの言葉で語る自伝的物語。この物語のイコは少し偏屈で頑固。継母や異母弟に対して一筋縄では行かない感情が渦巻く。その頃は女手のない父親の再婚など当たり前だったが、イコは母が恋しく多少美化されて胸の奥に仕舞われている。戦争が激しくなり東京では地獄の空襲。そこを生き延びたイコたち。脱走兵の挿話。戦争が終わって良かった。
2022/11/18
がらくたどん
先の戦争で記憶に残る日はいつですか?代々関東者の末としては忘れられない3月10日。東京大空襲。同じ関東者のイコちゃんの戦争の記憶を戦時下同じ年頃だった亡父の記憶に重ねて読んだ。集団疎開組だった父は縁故疎開できる級友を羨んだそうだが、個人の情だけに縋る疎開には別の気づまりが付き纏う。疎遠な親戚に生さぬ仲の継母と二人で疎開した少女の拭いきれぬ閉塞感、疎開先から父のいる東京の空が燃えるのを見つめる寄る辺なさ、それでも精一杯明るい方へと心を解放する奮闘の日々が角野さんらしい洒脱な筆致で綴られた自伝的児童文学。
2023/03/10
美登利
図書館員さんのオススメ本。表紙絵を見ても分かるように戦争中のお話です。小学校に上がる前に母親を亡くしたイコは深川育ち。少しずつ戦争の色が濃くなってゆき、今までとは違う生活に戸惑う子供の目線がとてもリアルです。著者は私の親とほぼ同じ年齢なのだなとハッとしました。幼いイコちゃんのように何故こういう事態になっていくのかわからないままに、「ご時世だから」との言葉で片付けられる日々を過ごしていたのだろう。戦争は誰も幸せにならない、残された人々の心も奪ってしまう。やはり二度と起こしてはならないのです。
2016/04/08
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