薔薇十字叢書 風蜘蛛の棘 (富士見L文庫)
薔薇十字叢書 風蜘蛛の棘 (富士見L文庫) / 感想・レビュー
Bugsy Malone
『風蜘蛛』は...「風にたゆたい、耳元で囁き、人を惑わし、風となって...」それは関口巽が創作した妖怪。京極堂は云う、妖怪は「日々生まれては消えていくもの...人間社会の装置でもある」と。そう捉えるならば、ネットという蜘蛛の糸が張り巡らされた今の世には、この風蜘蛛は跋扈しているのだろう。著者のシリーズ2作目の本作、一行目から震えてしまう。記憶が甦るのだ、絡新婦が陰摩羅鬼が。もっと読んでいたい。最早紛い物では無いこの世界に浸っていたい。現代の世に新たな妖怪を産み出してしまった著者に喝采です。
2017/10/27
カナン
「薔薇十字叢書」で、最も本家の空気を壊さず軽やかに仕上げるのがこの作者ではなかろうか。本家の絡新婦の後と思われる初夏の湿度の中で弾けた、匂い立つGHQの名残。連合国向けのラジオ番組で「東京ローズ」と呼ばれた謎めいた蠱惑的な声の女の行方。時代の波に呑まれ消された「もく星号」の墜落事故。犬が咥える子供の腕。泣き濡れる黒い眼の娘。紅白の薔薇の海で、榎木津に黒薔薇と呼ばれた禁欲的な一人の美男。憑き物落としが落とさないことで新たに展開していく新たなストーリー。急ぎ足なのが非常に惜しい。正にバラバラの薔薇で、蜘蛛だ。
2019/03/03
Yuna Ioki☆
1613-44-44 シリーズ作品フェス№11 やはり本家よりコンパクト感は否めない。榎さんのはちゃめちゃ度が低いのは不満。早く本編の続きが読みたい。
2017/05/26
つたもみじ
薔薇十字叢書。著者さん二作目。前作「桟敷童の誕」同様、今回もオーソドックスなパスティーシュ。戦時中、日本軍が行っていた連合国向けのプロパガンダ放送ラジオのアナウンサー、愛称を「東京ローズ」。元GHQ職員から、探偵・榎木津に「東京ローズを探してほしい」という依頼が来るが、手掛かりは声。見る事しかできない榎木津と探偵助手・益田。捜査はやがて、薔薇屋敷の人喰い蜘蛛から逃げてきたという少女の保護、刑事・木場が追うバラバラ殺人とも絡んでいく。原作の雰囲気もあり良かったです。個人的には前作の方が好みでしたけど…。
2017/06/26
瀧ながれ
本家シリーズが、「妖怪はこのように生まれてくるのだよ」と告げる作品なら、こちらの物語は、「よく見てごらん、妖怪などここにはいなかった」とほどく巻なのかなあと、読みながら思いました。あのときに見えたものを再び探そうとしても、ただしく同じものを捕まえられるとは限らない。おんなのようなおとこだったり、まがいもののダイヤモンドだったり、やさしさのような罪だったり…。たぶん、陰陽師など出てこなくてもすんだ事件のはずなんだけど、探偵や探偵助手が関わっちゃったからなあ(苦笑)。「東京ローズ」の存在がロマンチック。
2017/05/31
感想・レビューをもっと見る