すみれ荘ファミリア (富士見L文庫)
すみれ荘ファミリア (富士見L文庫) / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
完全に爽やか?な装丁にすっかり騙されてしまいました。『本屋大賞』を受賞して、今ノリにノッてる作家さんですが、やはりその作風はしっかりと築かれており、本作においても、決してただのいい話ではないコトが十分に伝わりました。体が弱く、下宿の管理人を務めている主人公「和久井」の元へ、ちょっとした事故から謎めいた男「芥」がやってきます。「芥」は作家であり、同じ下宿に住む住人達とも微妙な距離をおいて接します。お互いに謎めいた雰囲気の二人はどこか割りきれず、繋がりを深めていきます。まさかまさかの展開に、ただ驚きでした。
2020/04/11
sayuri
少女漫画の様な装丁と可愛いタイトルから想像していた物とは180度異なる、毒を孕んだ作品。主人公はおんぼろ下宿・すみれ荘で大家代理兼管理人をしている和久井一悟。入居者は古株の青子、TV制作マンの隼人、OLの美寿々の三人。そこに、芥一二三と名乗る新しい入居者がやって来た事から物語はスタートする。それぞれの人物の裏の顔、和久井の家族の秘密、その1つ1つが表面化するたびに感じる苦みは半端ない。誰だって、上手くやりたいのに空回りして、意志とは違う方向に進んで行く事は多々ある。人の心の奥に巣食う闇を繊細に描いた秀作。
2020/04/11
モルク
今では珍しくなった賄い付き下宿すみれ荘。大家である母が彼氏の所に行ったため息子の一悟が大家兼管理人であり、住人は個性的な3人。そこに作家の芥が一悟の自転車にぶつかり怪我をしたことで転がり込む。そして芥が幼い頃両親の離婚で父に引き取られた弟と知るが…。何のために一悟の前に現れたのか、そして母との確執とは何か。芥の同居で、家族のようだった下宿人もそれぞれ闇の顔が見えてくる。感情を顔に出さずシビアに対応する芥、それがいつの間にか一悟を守っていることに気づく。古株下宿人であり一悟の亡き妻の姉青子の歪んだ愛が怖い。
2022/04/11
machi☺︎︎゛
おんぼろ下宿のすみれ荘の管理人、一悟とその住人、青子、隼人、美寿々。そんなすみれ荘のほんわかした連作短編集かと思いきや、芥一二三という謎の小説家が新たに加わり住人たちの真の顔を暴いていく。何の問題もないと思われていても誰でも心の奥に隠していて勘付かれたくないものはある。そんな思いを容赦なく引きずり出す芥。だけどそんな風になってしまったのには壮絶な過去があってそれに関わった人を可哀想に思った。だけどそこからの再生も書かれていてよかった。
2023/07/03
akiᵕ̈
すみれ荘に暮らしそこに集う顔ぶれは、一癖ある人たち。そんな他人同士が一つ屋根の下で暮らしていく中で見せる表の顔、裏の顔。人から見える顔と内面に渦巻く人には見せない裏の顔の違いが、日常の出来事から徐々にあぶり出されていく。自己肯定感の低さからくるいびつな愛は、関わった人の人生を狂わせてしまうし、嫉妬や不甲斐なさで溢れ、自分との折り合いが上手に付けれないと、益々自分を追い詰めてしまう。家族の様に近しくも、でも他人である人との距離感の取り方大切さを、読んでいて痛感した物語でした。
2020/04/23
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