社会を作れなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田國男入門 (角川EPUB選書)
社会を作れなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田國男入門 (角川EPUB選書)
- 作家
- 出版社
- KADOKAWA/角川学芸出版
- 発売日
- 2014-10-09
- ISBN
- 9784040800189
社会を作れなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田國男入門 (角川EPUB選書) / 感想・レビュー
ころこ
「起源の民俗学=ロマン主義文学」と「公民の民俗学=社会的な文学」に分裂している柳田像の前者を切って、後者に焦点をあてます。本来は両者を統合する像が描ければ良いのでしょうが、著者の現体制批判における前のめりの感じはお説教のようで、一歩引いて論じる方が、説得力が増すのに残念です。私小説ではない自然主義による言文一致を、データベースとしての投稿誌を運営していくことで実現させていく。コミュニケーションツールの確立が「社会」の成立に不可欠だと後者の柳田=著者はいいますが、これはほぼ「文学」と同義でしょう。
2019/11/26
サイバーパンツ
社会を作り損ねたこの国への処方箋として柳田國男を読み直す。入門と銘打つだけあって読みやすく書かれているが、皮肉はいつも以上にキツい。農政学、民俗学、国語/社会科という形で、個人が自立するための、社会設計のためのツールを具体化しようと試みた柳田の姿は、永田洋子や宮崎勤、オウムから少女漫画や村上春樹、創作論に至るまで、私を語るための言葉について考え続けた大塚に重なる。一方でロマン主義的でありながら、また一方では公共的という面もそっくりで、柳田論であると同時に、本書は大塚の原点を読むものであるように思う。
2019/01/10
袖崎いたる
ネットというインフラが成立した現代において、そのデジタル空間における公共性についての意識が問われて久しい。しかし誤爆に炎上し、中傷を擁護する匿名利用者は絶えず、反面では相互自慰的な無痛の蛸壺に閉じこもる寂しさへのサプリ的にネットを利用する人たちもいる。著者曰くその「ソーシャル(笑)」な光景は、柳田國男が同時代人へ印象した「ソーシャル・ハイ」、すなわち「みんな繋がれてテンション上がるわwww」的な情状性と共通した構造だと見做す。本書を読めば少なくとも自分のソーシャルなツールへの接し方に自覚的になれるだろう。
2016/04/14
eirianda
柳田國男とタイトルにあるので、民俗学という妖怪など俗信の掘り下げが、現代社会にどう関わるのかな? と思い手にした本。しかし、実際は柳田國男が、取り組んだ教育改革についての本だった。結局、日本人は改革されず、西欧並みの個人を確立できない。よって本当の民意も生まれず、空気を読んで付和雷同。それは今に続く。根深い問題。言語の構造にも起因する。あ〜、教育よね、確かに。
2015/10/11
Ayumu Kobayashi
柳田國男の生涯とその仕事を振り返りながら、ロマン主義的夢想に耽る傾向もあった彼が如何に国難に立ち向かうための実際的な仕事をしてきたかを解説する。それは民衆に自分で考え、自立することを促すもの。そのために用意したのが世の中を知るためのデータベースとしての民俗学であり、空気に流されず自分の頭で考えて発言・行動するための国語であり、考える前提としての歴史・地理・公民としての社会だった。この本を読むと柳田の時代から現代に至るまで、農業も、選挙における衆愚も、問題は何も変わっておらず何も解決できていないなと感じる。
2015/01/04
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