秋月記 (角川文庫)
秋月記 (角川文庫) / 感想・レビュー
三代目 びあだいまおう
『藩主を蔑ろにし専横を振る舞う藩政の黒幕』と断され流罪の処分を受ける主人公、間小四郎。実在した人物の半生を描く物語はこのシーンから始まる。幼き頃から臆病で、妹を野犬から守れなかったことのトラウマから『逃げない』と決意する小四郎。本藩の援助を受けながらも秋月藩へ財政破綻寸前。当時の家老として専横を極める宮崎織部への不満は留まりを知らず、策略により織部追放を果たす小四郎だったのになぜ、織部と同じ轍を踏んだのか?清濁の印象が二転三転する漢の生き様に真の潔さが滲む!登場する女達や仲間の潔さも光る確かな傑作‼️🙇
2020/03/11
ハイク
葉室麟は「蜩の記」を読み2冊目。本格的歴史小説で九州秋月藩のお家騒動を描いたもの。巻末に参考文献がある通り、古文書を題材としたものでどこまで著者の創作かはわからないが、骨格は史実に基づいたものであろう。家老まで登り詰めた間小四郎を主人公にした封建体制での武士の生き様や振る舞いはどうあるべきかを問うた。幼い時妹が黒犬に吠えられた恐怖から守れなかった事を悔やみ、以後「逃げない男になりたい」を信条とし学問、剣術に励み友との友情を大切にして仕事に励む。黒田藩の鷹匠一派17人と小四郎と友8人との戦いが圧巻である。
2015/09/19
のり
藩を牛耳る家老の「織部」を失脚させる為に、仲間と共に立ち上がった「小四郎」。まだ若輩の為に織部の真意をよみきることが…難事は次々に起こり、本藩である福岡藩に組込まれそうになる。藩政の回復・良き政道に導く為に尽くそうとするが…要所要所に先達の言葉に頷きながら感服。小四郎の武士としての気概・次世代への思惑に胸打たれる。「もよ」「猷」「いと」女人達も可憐だった。
2017/09/21
遥かなる想い
筑前の小藩・秋月藩をめぐる物語である。 爽やかで凛とした雰囲気が著者の世界らしい。 本藩と秋月藩をめぐる攻防の影に 生きる間小四郎の人生を通して、藩のために 生きる人々を描く。策謀に満ちた展開の中で 何が真実で 何が嘘なのか…町娘いとを 初め 登場する女性たちの清々しさも嬉しい…そんな作品だった。
2022/06/29
ふじさん
本藩の福岡藩の軋轢に耐え、秋月藩の独自の道を歩むことに奮闘した間小四郎の半生を描いた作品。家老の宮崎綾部を罷免した政変、綾部崩しから始まり、福岡藩との藩の存亡を懸けた騒動の日々、友人との確執、仇討ち等、次々と難問が迫る中で、武士の矜持を支えに困難を乗り越えて行く。描かれているのは、小藩の秋月藩の置かれた厳しい現実に悩み苦しむ人々の辛い歴史の記録だ。最後には、宮崎綾部と同じ道を歩むことになる余楽斎(小四郎)はどんな思いで、自分の人生を振り返るのか。最後に残るのは、満足感か虚しさか、本人にしか分からない。
2023/03/16
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