あなたの獣 (角川文庫 い 73-1)
あなたの獣 (角川文庫 い 73-1) / 感想・レビュー
けいこ
ある男の生涯の断片を綴った10章。他人事のように冷めた感情、何を考えているのかわからない、捉えどころがない男。二股はするし、職も長くは続かないし、全く魅力が無い。関わる女性もひと癖あって怖い。捉えどころの無い男と言えば、川上弘美さんの『ニシノユキヒコの恋と冒険』を思い出したけれど、断然ニシノユキヒコの方が魅力的。ラストは冷めた男の唯一の執着が成就した形になったのか、結局、幸せな男だったのか。どこにも共感出来ないし、低いテンションが続く作品だけれど、何故かどんどん引き込まれたのは井上荒野さんの成せる技か。
2022/06/15
てふてふこ
関係する女からも「悪くはないがわかんない人・いて、いない人」と評される、熱量の無い、櫻田哲生という男。ふわふわと成り行きで生きてるが、悪気ない様に現れる裏切り行為。内面の「獣」が覗えた・・。面白かったです。
2013/07/27
rakim
流れに逆らうわけでもないのにストーカーじみた執着心も持っている。彼に「ハマる」女もいるけれど、ダメ男の典型にも見える。関わりたくなくても関わってしまった女性たちは何を得たのでしょう?綿矢さんの解説に尽きる。
2017/07/17
のの
櫻田哲生は何だかんだいってセックスに持ち込むのが単に上手い、天然系キモい人だと思う。 世の中はこういう男の人に結構甘いのなんでだろ。
2017/06/02
ken
全10章からなる中編小説。各章は「櫻田哲生」という男の生涯の断片で、それらがランダムに配置される。章を重ねるごとに「櫻田哲生」という男の人生も少しずつ明らかになるわけだが、彼自身の輪郭だけはいつまでも模糊として捉えようがない。彼の内面には謂わば人間的な血の気が通ってるとは思えず、「無個性」な彼は読者からの一切の共感を拒んでいるようだ。それでいて本作が不思議な魅力を持っているのは、人間が持つ不可解さ、不気味さをまるで秘密を明かすかのような読者へささやくからだろう。タイトル『あなたの獣』とは多分そういうこと。
2018/07/31
感想・レビューをもっと見る