ラン (角川文庫)
ラン (角川文庫) / 感想・レビュー
yoshida
交通事故で家族を喪い、唯一の肉親だったおばさんを病気で喪った環。諦感と死への憧れを持ち、内に籠る生き方をしていた環が、過去に折り合いをつけ力強く人生を走り出す様が描かれる。ひょんなことから環が参加したランナーチーム。そのメンバーの一人一人に人生があり、苦悩がある。世界の縮図のように。それぞれの力で人生というレースを走ってゆく。時に仲間に助けられ、また、誰かを助けながら。人生はマラソンに似ていると思う。走るのは自分だし、自分自身との戦いだ。走る原動力はそれぞれの想い。仲間の声援が背中を押す。素晴らしい作品。
2018/02/17
さてさて
「カラフル」と全く同じ感情に包まれる読後。 あたたかく優しい感情に包まれる読後。そして、明日もまたがんばろう!という前向きな気持ちに包まれる読後。 心のど真ん中を射抜かれるという感覚、そこから流れ出るあたたかい感動と満足感に包まれる心からの幸せをじんわりと感じた森絵都さんの傑作でした。 森絵都さん、こんなにも深い感動をありがとうございました。
2020/12/01
しんたろー
森さん5冊目。題名から「スポ根青春もの」とに思っていたので、序盤の緩い展開と主人公・環の後向きな姿勢に戸惑った。そして、突然始まるファンタジーにも驚いたが、徐々に慣れて「森節」とも言える「芯の強い優しさ」の語り口が心地好くなる。ランニングチームのメンバーたちのキャラが「いるいる!」という親近感が持てるし、段々とチーム感が増してゆくのも群像劇好きには嬉しかった。特に環の好敵手?真知栄子は憎たらしくも愛すべき存在として、この物語の大きなスパイスになっていた。最終章が駆け足過ぎた感もあるが、前向きになれる良作。
2018/09/10
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
現世と冥界の境にある『レーン』。これを越えれば家族に会える。私を残して逝ってしまった家族に……。家族を事故でなくした女性・環が、同じ境遇のサイクルショップの店主に貰った自転車で『あの世』へ続く道を見つける。再会を喜ぶのもつかの間、自転車を手放さなくてはならなくなり、環は自分の足で『レーン』を越えるため、ランナーズチームに入ってトレーニングを開始する……。アップダウンが激しいストーリーだが、『冥界のルール』など設定が巧みに作り込まれていて一気に読ませる。チームメイトの真知栄子の存在が物語に奥行を与えている。
2016/07/25
ゴンゾウ@新潮部
スポ根ものを想像していた。モナミ一号に乗り天国の家族達に逃避する環。 いつ前を向くのかと食傷気味になる前半だった。ドコロや訳ありの仲間達と走り出してから一挙にエンジンが加速した。森さんが奏でる再生の物語に感動しました。
2017/12/04
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