山河果てるとも 天正伊賀悲雲録 (角川文庫)
山河果てるとも 天正伊賀悲雲録 (角川文庫) / 感想・レビュー
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
面白かった。信長の伊賀攻めを扱った作品。戦国期、信長という巨大な力の前に、出世であったり故郷への誓いであったりと、それぞれの信念のもとに生きようとする若者の姿が丁寧に描かれている。取ってもさして影響がないような伊賀の田舎の地まで攻めとり尽くす権力者の貪欲さと、そこでなすすべもなく蹂躙されていく伊賀の運命が悲しい。スケールの大きさと各登場人物の細かな描写をあわせ持った、これぞ歴史小説って感じの、伊東作品の中でも印象に残る作品の一つになりました。
2017/09/26
藤枝梅安
08年に発行された単行本に加筆修正を加えて文庫化。伊賀国に生まれ育った若者達、小源太、忠兵衛、左衛門、勘六が織田信雄の伊賀攻めを機に、それぞれの死に場所を探していく物語。信長という絶対的な存在におびえる地侍達の思惑と「伊賀撫斬」の凄惨な描写が印象に残る。終章では「神」を絶対的な存在として生きる宣教師達と出会った左衛門の精神の解放が描かれる。4人の若者達のそれぞれの生き方が交錯し、緊迫の終末を迎えるが、結末は「人の営み」の豊かさを肯定する描写で終わっている。そのまま映像化されそうなドラマティックな1冊。
2013/08/29
キムチ
題に魅力を感じ読むが・・ページは進まない。旅の友にした割には尚の事。舞台は伊勢・山城・近江・奈良に囲まれた広大な範囲。佐々木家臣、六角氏の支配が揺らいできた頃の若者4人。時は信長の台頭する前夜期。隆慶一郎をしてヒトラーに次ぐといわしめた彼、そしてその一族にどう向かうか従うかによって運命がちぢに舞う。筆者の書かんとした意図が何だったろうか・・戦国期の殺戮から人間愛を見つめんとしたか?個人的にゼウスの愛の語りが浮いていた気がした。最後まで気持ちを入れれず、未消化感あり。
2014/11/01
kawa
殺戮を極めた信長の伊賀攻め(天正伊賀の乱)が題材。敵味方に分かれ刃を交える結果となってしまった伊賀の若者の悲劇を通じて乱を描く力作。無能な織田信雄を手玉にとる陰謀家・滝川三郎兵衛(雄利)のヒール振りも印象的に描かれる。歴史的にはマイナーな事件に光を当てた著者に拍手。
2017/10/29
只三郎
織田軍による伊賀侵攻(天正伊賀の乱)を描いた本作。 閉ざされた地域で平和な時を過ごしていた伊賀国。しかし、そんな国も時代の大きな流れに巻き込まれようとしていた。 伊賀の人々は己の信念、生活を守るため、野望を遂げるために様々な選択を迫られる。 このことは、何時の時代にも起こり得ることだ。現在の世の中でも・・・。 自分は、どのような選択をすべきかと考えてしまう。作品の中では主要人物が様々な選択を行うが、目標を達成するためであれば間違いは無いよう思われる。果たしてその時、自分はどのような選択を行うのだろうか?
2020/08/11
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