球体の蛇 (角川文庫)
球体の蛇 (角川文庫) / 感想・レビュー
夢追人009
道尾秀介さんが描く過去と現在が激しく交錯し虚実が入り乱れる一人の青年を巡る3人の女の人生の物語。「球体の蛇」には現実の蛇は出て来ませんが何度も壊されたスノードームの中でうごめいている印象が鮮烈ですね。暗くて切ないストーリーですが、でも読者を本格的に落ち込ませないのが道尾さんの良さでしょうね。主人公トモとサヨと智子とナオの愛の物語で序盤のトモが床下に忍び込む場面では乱歩の人間椅子を思い出しました。トモはこのままきっぱりとサヨと智子への執着を断ち切れるのでしょうか?智子を追って物語は続きそうな予感がしますね。
2019/11/14
takaC
最初から最後まで幻想的で何が真実なのかは下より何が現実なのかすらしっかり把握できなかった。友彦くん以外の心の内は結局よくわからないまま読了。
2015/05/23
KAZOO
私は道尾さんの本をいくつか読んできましたが、印象に残る方の本でした。どちらかというとこんな本も書くのだという感じです。今までは比較的ミステリーのような分野が多かった、まあこれもある意味ではミステリー的な部分はあるのですが、のがほかの作者が書いたのでは、という気がしました、若干暗めですね。最後まで読んだのですが少し苦手な分野でした。
2016/02/08
相田うえお
★★★☆☆17074 全体的にどんより薄暗くて重苦しい雰囲気が漂っています。濁った空気感もあって読んでいて息苦しさを感じます。縁の下,湿気,闇,蜘蛛の巣,カマドウマ,白蟻,火事...すでに前半から燻んだ負側の言葉が並び、陰性な世界観の中でどうにも遣る瀬無い事になっていくのです。後半で今までの凶事の真相が話され始めるのですが、何が本当だったのか曖昧さが残ったままなのです。人は繊細な感情を持っている時期に不運な出来事に遭遇すると、心が複雑に捻れることもあるかもしれません。誰も救われない話だった様に感じました。
2017/08/03
hit4papa
離婚した両親と離れ、近所の家で暮らす高校生の主人公。あかの他人でありながら温かい家庭を築いています。しかし、主人公が好意を寄せている女性の放火殺人現場に遭遇してから、仲睦まじい生活が徐々に変化していくのです…。主人公が抱える闇が明らかになるとともに、追い討ちをかけるような事実が次々と主人公に突きつけられるという重い展開です。ページを繰る手も止まりがち。幼い頃の一言が、大好きな人を死に導いてしまったのではないか、そして、また…、という主人公の懊悩が切な過ぎです。それゆえに、ラストは救いは心に響くのです。
2023/03/10
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