道徳という名の少年 (角川文庫)
道徳という名の少年 (角川文庫) / 感想・レビュー
hiro
07年に発表された連作短編と桜庭さんへのインタビューを収録。この5編の短編は、ネット配信、文芸誌、新聞等とすべて違うところに発表されているのには驚いた。町で一番の美女が父のいない女の子を産むことから始まる、この家族5代の物語。あの‘かんばせ’という言葉、女系、近親相姦等、他の桜庭作品を思い浮かべるところも多く、まさに桜庭ワールドの小品という感じがした。また、榎本さんの的確な‘解説’のおかげで、この作品の背景等も理解できた。桜庭さんへのインタビューも含め、桜庭ワールドを知るのに向いている本だと思う。
2013/08/31
アッシュ姉
著者十一冊目。連作短編+インタビュー集。インタビューより少ないページ数ながら、インパクトは大きい連作集。異国情緒ただよう寓話のような世界で物悲しさがつきまとう。なかでも、背徳と退廃の濃密な香りにくらくらする「ジャングリン・パパの愛撫の手」は忘れられない余韻を残す。インタビュー内容は著作の背景が興味深く、桜庭さんの頭の中をちらりと拝見した気分。
2020/05/07
らむれ
桜庭さん初読みです。一番エッセンスが濃いと聞いて選んだのですが…第一冊目、これで良かったのでしょうか汗!?淡々として清廉な空気と艶めかしさ、グロテスクの同居。甘いイチゴジャムも香る薔薇も近くで見ると恐ろしいような。美しさがじわじわと崩壊して醜へと向かう過程がたまらん。言葉づかいも、なかなか素敵(”かんばせ”とか!)。寓話のような物語の真意は掴めずでしたが、雰囲気には強く惹かれました。同時収録の製作秘話はもうちょっと作品を読み込んだ時のために取っておく◎次は長編にトライしたいです!
2015/09/28
Ame
作家・桜庭一樹独特の音感で紡がれるしっとりと耽美な物語。薔薇のかんばせを持った少女はいつか母となり、その子供もまた成長して親になっていく、そんな連綿とした血の繋がりが童話的に描かれている。艶やかな装丁・挿絵が物語の雰囲気を壊すことなく渾然一体となっていて素晴らしい。ただ一つ残念なのは後半に収録されているインタビュー集が作品から完全に浮いてしまっていること。他の桜庭作品を幅広く読んでいない読者にとってはあれこれ引用されてもさっぱりわからないだろうし、溜め息が出るほどの読後感がきれいさっぱり払拭されてしまう。
2015/01/13
mayu
HOBO選書。連作短編と著者インタヴューの二部構成。小説は短いながらも、読み応えあり。道徳と名付けられながら、まったく道徳的とは言えない、情緒的で、官能的な生き方。退廃の美とは、きっとこういうことをいうのだろう。世情的にも不安定で暗い雰囲気の中で、彼らのまわりだけ、独特の色を持つように感じた。インタヴューは作品の内容に触れている所も多く、それぞれの作品を読んだ上で読めばもっと楽しめたかなと思う。
2023/07/09
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