夕映え 下 (角川文庫)
夕映え 下 (角川文庫) / 感想・レビュー
のり
佐幕派VS倒貘幕派、最終決戦へと向かう。新しい国をつくり直す為に、どれだけの血が流されてしまったのか…江戸から東京への改名。時代も明治へ。良助を駆り立てたものは、官軍への憤り、大事な人の為に死地へと向かわせた。「おゆみ」の幸せも願いたいし、弘蔵夫婦の芯の強さ、周りの温かさに救いがあった。
2017/12/07
shizuka
タイトル「夕映え」が使われる場面は圧巻。とても美しい。弘蔵とおあき、この夫婦だけでなく世の中全体を照らし、温め沈んでゆく太陽。この先がどうなるかなんて、分からない。それはどの時代を切り取っても同じだ。百年前の人間、百年後の人間、いい時代になるかどうかみなが思い馳せる普遍的な思い、希望。この望みがあるからこそ人間は生きていけるのかな。おていの息子、明治元年生まれ。ここから江戸っ子ではなく東京っ子になるというのが印象的だった。江戸本所のいち夫婦の物語でありながら、なんとも雄大で懐が深い。宇江佐さんの真骨頂。
2017/05/31
ちょるる
やっと下巻読了。江戸から明治に移り変わる激動の時代でも、宇江佐さんのいつもと変わらない江戸庶民の息遣いや感覚が描かれている。おあきやおすさの気持ちが切ない。でもそこに惹かれる。彰義隊に入隊した、弘蔵とおあきの息子良助のことは、残念だし辛すぎる。どうして彰義隊に?と思ってしまう。いつの世も親心は変わらないように、松前の海岸の夕映えも昔も今も綺麗で変わらないのだろう、と昨日の夕焼けをみながら思ったりもした。
2017/11/21
keiトモニ
“紺碧の海は金色に光って見え…「見事な夕映えだな」弘蔵は呟く。「本当に」あおきも相槌を打つ”…ああ、なるほど夕映えか…。表紙の如く紅く見事!半次郎「大筒の音が聞こえなくなりやした」おあきが「当らない役者を大根って言うじゃない」…半次郎「なある」…両者うまいねェ!「でも今度は船で行くのはいや歩いていくの…津軽の瀬戸を渡る時は我慢するけど」「だな、津軽の瀬戸に橋は架かっていねェからな」…そりゃそうだ。しかし海峡の下には長い隧道があるぜェ…。解説の“江戸の市井に生きる人々の心の機微を描き出した”…おきゃあがれ!
2015/01/28
はにこ
今年(っといってもまだ2ヶ月半だけど)一番かも。彰義軍っていうのも、明治初めの東京も初めて感じることができたし、物語もすごく良かった。大切な人を失い失意のどん底から支えあって這い上がっていく姿にグッと来た。どんなに辛く悲しいことがあっても前を向いて歩いていかなければならない。時代にただ合わせるだけではなく、時には自分のペースで歩くことも大事だと教えてくれた作品だった。
2020/03/14
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