お文の影 (角川文庫)
お文の影 (角川文庫) / 感想・レビュー
yoshida
宮部みゆきさんの時代物6編からなる短編集。どの短編も高い水準であり読ませる。各作品に共通して怪異が登場するが、背景に流れるのは人の想いや業の恐ろしさだろう。「ばんば憑き」での若妻の顕す主人公への意地の悪さと蔑視。それを堪えて日々を過ごす主人公の姿に、私も自身の結婚生活を思い出した。「博打眼」の怪異の生まれた背景の悲しさ。そして事件の解決に息を呑む。「討債鬼」での人の業と、欲の深さの丹念な描写が読ませる。どの作品もほのかな救いがあるから読了感が良いのだと思う。宮部みゆき作品に外れなしと実感出来る作品です。
2018/12/08
優希
江戸の妖の世界が描かれていますが、時に怖く、時に切なく、時にホロリとさせられる様々な色がありました。どの作品も綺麗にまとまりつつも、この先を読みたいと思わされます。話にスッと入っていけるような感じが好きです。どこかで読んだことのあるキャラクターたちが登場したりするので楽しく読むことができました。どんな話を描いても根底に優しさがある宮部さんの時代小説、やっぱり好きです。
2015/10/21
mariya926
久々に読んだ内容も、初で読んだ内容もありました。どこか悪霊(?)出てくるオドオドしい短編集でしたが、久々に宮部みゆきさんの時代小説を堪能しました。三島屋シリーズがあったのが驚きであり、その為に読んだ小説でした。
2023/12/22
katsubek
あ~、この人は、久しぶりに……。という登場人物に会えるのも楽しい。そして、お話はどれも、怖くて優しくて哀しい。うん、宮部みゆきの面目躍如というところです。どれもいいが、特に「お文の影」と、最後の「野槌の墓」がいい。人が生きるということの哀しみを、死というものを通じて感じられるというのは、何とも言えないほどしみじみと趣がある。そして、優しい救いがある。どちらも、映像化したくなるような作品だねぇ。勿論、読むことについても、お薦めです。ぜひどうぞ!
2014/08/01
ふう
やっぱり宮部さんはすごいと、人の業を見つめる深くやさしいまなざしに感心しながら読み終えました。悲しいことやつらいことの多い世の中だけど、互いを思いやり、知恵をよせ合って何とか乗り越えていく人々の姿が、つつましく、そして温かい…。めでたしめでたしとはいかないけど、まあこのくらいでと折り合いをつける加減のよさもいいですね。折檻されて死に、迷子になっていた子どもをあちら側に送ってあげる「お文の影」「野槌の墓」。子どものけなげさと大人たちの切なさがしんみりと伝わってきました。人の心の闇が一番怖いなといつも思います
2015/02/05
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