翼に息吹を (角川文庫)
翼に息吹を (角川文庫) / 感想・レビュー
RIN
徹底して特攻を送り出す整備兵の視点から書かれた物語。熊谷さんは何となく動物とかマタギとかの印象だったのでこの題材はやや驚き。全体を通して理工学部出身らしく飛行機の部品や仕組みが異常に緻密に描かれており、文系の自分にはイメージしにくくはあるものの、その緻密さ故に、人ではなく機械を愛おしみ本来の機能を果たせぬまま特攻へ飛行機を送り出す虚しさがひしひしと伝わる。とはいえ、勿論彼ら整備兵が飛行兵を軽視しているわけではなく、その慟哭と抱え込んだ闇に戦争の罪深さを突きつける秀作。『群青に沈め』も読まねば。
2016/03/27
keith
特攻の基地知覧を舞台に、特攻機の整備を担当する須崎。自分が仕事を遂行すること、すなわちそれは特攻機で若き飛行兵が死ぬこと。その思いを胸に秘め黙々と職務を全うする。その須崎の前に特攻で出撃するたびに整備不良を理由に戻ってくる飛行兵有村が現れる・・・。有村の書き込みがちょっと物足りない。もう少し有村の想いがわかればよかったのだが。戦争の理不尽さを整備兵の目から描かれている。知覧にはいつか訪れてみたいと思う。
2015/04/23
James Hayashi
終戦間際の特攻隊の基地となった鹿児島知覧が舞台。そこで戦闘機の整備に励む青年が見た太平洋戦争。エンジンなどの整備の記述が多く専門的。特攻を前に何度も整備不備を理由に帰還する兵と整備兵のやり取りと心理が一つのクライマックス。その後は如何に無益な戦略であるか寒ざむ見せつけられる。特攻隊の飛立つ側からでなく送り出すエンジニアからの青春と生死。やるせない読後感。
2017/06/16
しーふぉ
特攻隊の飛行機を整備する主人公。青春小説と銘打っているけど、青春小説とは思えなかったかな。知覧にいつか行ってみたい。どういう場所で特攻に行く直前まで過ごしていたのだろう。
2020/12/18
Dash-Checker
陸軍知覧特攻基地を舞台に整備兵の苦悩と心情を描く。特攻の場面はなく、米軍の空襲シーンも最小限だが、実にサスペンスフル。努力がすべて無に帰したのは特攻隊員だけではなかったと思い知らされるラスト。優れた反戦小説である。
2022/10/18
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