失踪 (角川文庫)
失踪 (角川文庫) / 感想・レビュー
Tetchy
セレブ達の倒錯した性ビジネスと性愛が蠢くNYで無骨な刑事が満身創痍になりながら体一つで乗込んでいく、いまどき珍しい泥臭い男の物語。誘拐事件は本書によれば最初の1時間で半数が、3時間以内で3/4が殺されるという。単なる児童虐待趣味のために無垢な命が突然奪われるのだ。事件が解決しても全ては解決しない。デッカーと妻との仲は愛が失せていなくても、もう元の関係に戻れない。このペシミズムはウィンズロウならではだ。フランク・デッカー、元刑事。今日もどこかで失踪人を探してアメリカ中を疾走する。そんな惹句がふと思いついた。
2016/07/25
Panzer Leader
「第170回海外作品読書会」職を辞してまで少女失踪事件の謎を追い求める元刑事デッカー。前半は重々しい警察小説のようでユーモアの欠片もない様な描き方だったが、NYが舞台になるにつれウィンズロウ節が炸裂!彼にしては小品ではあるけれどビンテージ物のウィスキーの様に味わい深い逸品。
2020/12/13
harass
少女失踪事件を追う刑事は刑事を辞め一年がすぎる。かすかな手がかりが次第に真相に…… 多数の未解決の失踪事件への著者の告発に満ちたサスペンス小説。あまりに酷い現実に対して、創作でのお約束勧善懲悪が不可欠であり、読む楽しみになると実感する。上流階級たちの描写など人物が面白い。刑事の執念がいまいち理解できないが、なかなか楽しめた一冊。おすすめ。
2019/10/13
ずっきん
【ドン・ウィンズロウ未読/再読祭り開催中】『報復』とセットのドイツ刊行作品。さすがドン様、いきなり怒れるキャラがガツンと立つ。誘拐された少女を探して全米を駆けずり回るデッカーに、ジャンキー、性犯罪者、昔気質のマフィア、トップモデルと、美味しいとこが絡まりながら物語が疾走する。問題提起とエンターテイメントを両立させる腕前には毎度のことながら感嘆する。天性の語り部との評価に疑う余地は無いが、読みやすさとスピーディーな展開に比重を置いたせいか、ちと軽い。ウィンズロウ作にしては物足りないというのが正直なとこ。
2020/05/23
のぶ
とてもストレートに楽しめる作品だった。近年のウィンズロウの作品は「犬の力」に代表されるように、麻薬のシンジケート等の描写で知らない世界を描いているものが多く、それは作品として大いに評価出来るものだが、重苦しく手強い作品が多かった。本作は少女の失踪事件の捜査と救出に限定して描いているので一気に読めて爽快感の残るもので、自分はこの手の作風の方が好みだ。同時刊行された「報復」も手元にあり、4月には「犬の力」の続編の「ザ・カルテル」の出版も控えているようでそちらも楽しみ。
2016/03/09
感想・レビューをもっと見る