切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人 (角川文庫)
切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人 (角川文庫) / 感想・レビュー
青乃108号
やっぱり中山七里の本は安心して読める。これは大きい。物語の展開もクライマックスに向けて息もつかせないし、さらにその上ヒネリも効いている。物語のテーマも、臓器移植推進の為に急がれたとされる脳死=人の死とする定義に疑問を投げかけており、非常に考えさせられる。ラストシーン、他人に移植された我が子の心臓の鼓動に耳を寄せる母親の思いは、人の親なら誰しも共感出来るところだろう。さて、本作はシリーズ化されているようなので、次作も読もう。安心して。
2023/06/02
SJW
カエル男殺人事件の時は、刑法第39条の問題提起だったが、今回は臓器移植の問題提起。カエル男殺人事件の古手川刑事が再登場!事件の捜査でいかに犯人を追い詰めていくかがミステリーの醍醐味と言えるが、この小説では臓器移植の法律や運用における課題について今回知ることができた。様々な意見があり、それぞれ納得する部分もあり、ドナーやレシピアント、その家族の悩みは計り知れないと思う。臓器移植に懐疑的になりつつあったが、最後の本来なら許されないドナーの家族とレシピアントのふれあいに涙が溢れた。このように両者がが幸せになれれ
2017/11/14
イアン
★★★★★★★☆☆☆医療ミステリの趣を色濃く感じる刑事犬養隼人シリーズ第1弾。都内で臓器をくり抜かれた女性の遺体が発見される。その後「ジャック」と名乗る犯人の声明文がテレビ局に送り付けられ…。実在した殺人鬼と臓器移植を絡めたプロットの大胆さに驚くが、そこに事件を追う刑事・犬養自身の移植問題を絡めるのはさすがにやり過ぎな気も。とはいえエンタメ作品としてこれくらい振り切った設定は嫌いじゃない。疑問点があるとすれば、合同捜査とはいえ警視庁と他県警の刑事がペアを組むことがあるのかという点と、本末転倒な真の動機か。
2022/02/03
ゆのん
刑事犬養隼人シリーズ1作目。臓器移植をテーマにした猟奇殺人ミステリー。タイトルに『切り裂きジャック』とあるのでもっと模倣犯罪や犯行声明などがあると期待しすぎてしまったらしい。思ったよりもジャック色が薄いのは残念だったが内容は犯行の手口の割に落ち着いたミステリーだったように思う。臓器移植の問題は非情に奥の深い事を再認識させられた。
2018/03/24
NADIA
小さな子供が善意の募金によって渡米して手術を受けるニュースを聞くたびに「この子はとてつもなく重たいものを背負うことになるのだな」と難病以外の部分でも気の毒に感じていた。天使のような良い子に育たなければその善意の人たちを落胆させることになるのだろう。不特定多数の善意はとても重い。またドナー側にとっても、その価値がある人に提供されたことを願っているはず。臓器移植について逆側から改めて考えさせられた。中山七里、本当に引き出しが多い。古手川刑事、成長しているなあと感心。
2017/06/07
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