或るろくでなしの死 (角川ホラー文庫)
或るろくでなしの死 (角川ホラー文庫) / 感想・レビュー
masa
死は誰にでも平等で、生は理不尽だ。油断すると世界を揺らす才能が27歳でこめかみをBANG!喪失という精神の死は特に厄介だ。だから、生殺与奪を司るならば、殺してと祈るガキはぶっ生かす。そうしない死神はうすのろの莫迦だ。それでも死を生業にするなら、駅前のロッカーにブツは隠した。番号は0405、カート・コバーンの命日だ。仕事は音のない静かな雨の夜が捗る。音は生そのものだ。しみったれた、ミュージックは聴きたくねえ。お前は聞く。「ねえ、大人になれば少しは楽しい?」ルードトの冷めた珈琲を飲み頷く。嘘の味はいつも苦い。
2019/02/18
かみぶくろ
表紙が素敵すぎて衝動買い。「独白する~」以来の平山夢明さんだが、相変わらず夥しいゴミや残飯や腐乱死体が流れてくるドブ川みたいな独特の世界観で素直に感銘を受けた。最初のホームレスの話からして発想が秀逸すぎる。世の中は決定的に残酷、誰もが傍観者。世に数多あるイヤミスとかとは一線を画す、もっと本質的な厭世感みたいなものを感じます。死は醜く不条理で嫌らしく避けがたい。美しい死だなんて人間のコンテクストにしかないある種の倨傲だよなあ、と思える作品。そういう気分の時には、ぜひ。
2015/02/02
スカラベ
或る□□の死と題した7編からなる短編集。いずれも様々でからっぽな「死」に満ちている。表題作の死に様は強烈。映画『ハンニバル』のショッキングな場面を想起させる。それぞれ登場する人物たちは、どちらかといえば社会からはみ出したはぐれ者が多い。それも悲哀さに拍車をかける。「或る英雄の死」のあっけない報復シーンは、しばらく目玉焼きは食べられないなって思わされる。全編を彩る残酷さが冴える平山夢明の綴る物語は、他にはないグロさを兼ね備えているので、苦手な人は要注意。とにかくこの「毒のある」小説は癖になる人には癖になる。
2014/11/12
Bugsy Malone
死に纏わる7つの短編。第1話「或るはぐれ者の死」を読み終わり、中国の幼児ひき逃げ事件を思い出す。それが本作単行本刊行直前に起きている事を知り他国の事件とはいえ平山さんの創造する世界に現実が追いつこうとしていることに戦慄した。続く6編「嫌われ者」「ごくつぶし」「愛情」「ろくでなし」「英雄」「からっぽ」の中で描かれている死も、何れも弱者やはじかれ者達の死。無関心、悪意、無自覚によって起こされる死は既に現実の物と成っているのかも知れない。平山さんはその事に対しとても優しい気持ちで警鐘を鳴らしている様な気がする。
2015/07/14
ノコギリマン
邪悪なファンタジスタ、平山夢明によって紡がれた〈死〉にまつわる短編集。随所に散りばめられた酸鼻を極める人体損壊描写はさることながら、登場人物たちのクソっぷりがフルスロットルで逆に爽快です。氏の作品を読む度に、この人は〈暴力〉というものを〈コミュニケーション〉の延長線上にあるものと捉えているとしか考えられないんですよね。同じような題材で書き続けているケッチャムとはぜんぜんベクトルがちがうと個人的には思っている。ケッチャムはあくまで〈暴力〉を忌まわしいものとして描いているもの。まあ、一言で言うとオススメです。
2015/12/19
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