月夜の島渡り (角川ホラー文庫)
月夜の島渡り (角川ホラー文庫) / 感想・レビュー
しんたろー
沖縄を舞台にした7つの物語。幻想的なのにリアルさもある独特の雰囲気は健在。それに加えて、琉球の陽気さと哀しさが同居した気質と風土の匂いが混ざり合ったような、濃厚な短編集…気が付くと南国の湿気に包まれている感覚になる。どれも面白くて「もっと先まで読みたいなぁ」とも思ったが、だからこそ余韻が残るのだろう。得体が知れなくて怖い『ニョラ穴』、エロチックで怖い『夜のパーラー』の2編は人間の恐さが際立っていた。『月夜の夢の帰り道』と『私はフーイー』の2編は恒川ワールドらしい特に好きな作品で、長編になる題材だと思えた。
2018/02/13
おしゃべりメガネ
恒川さんの作品を読むたびに必ず毎回感じるのですが、どうしてこんな不思議で素晴らしい世界の話をさりげなく、サラッと書くことができるのか、ひたすら敬服します。今作は舞台を「沖縄」にて繰り広げられるホラー&ファンタジーなお話を短編7編にて、十分堪能できます。相変わらずヒヤっと背筋が凍るような話もあれば、それどころではないレベルでガツンと読者を叩き落とすヘヴィな話もあります。恒川さん作品を読むと不思議とジブリの世界とリンクし、オトナのおとぎ話を読んでいる気分にさせてくれます。恒川さんは別の次元の作家さんですね。
2015/01/14
yoshida
沖縄で起こる怪異7編からなる短編集。恒川光太郎さんの筆により、淡い幻想が紡がれる。白眉はラストの「私はフーイー」か。とある島から流れ着いたフーイーは輪廻転生し三度生を受ける。残る今までの生の記憶。家族との再開。仇との邂逅。三度目の転生で成長したフーイーを待っていたのは、沖縄戦だった。力を失った筈が米軍に終われ業火から逃れて羽ばたくフーイー。その先に彼女を待つものは何か。また「月夜の夢の、帰り道」で少年の未来を変える為に、凛と叫ぶ少女の姿が美しい。どの短編も現実にあるのではと思わせる魅力が沖縄にはあるのだ。
2017/08/20
ケイ
沖縄、それも離島が舞台の短編7つ。幻想的だ、とはあえて言わずもの恒川作品集。しかし、そこに沖縄の空気と言葉や言い回しが入ると、幻想に取り憑かれたの如くに作品に取り込まれる。琉球の島々は、こんなセカイを思わせるものをもっているのだろう。近くに住む怪物のような「クームン」、しかし本当の怪物はヒトだ。「月夜の夢の、帰り道」展開としてはありがちな話ではあるが、少女の毅然とした感じが良い。この2つがとくに好み。
2015/03/27
KAZOO
恒川さんが今住んでいる沖縄を舞台にしたファンタジー・ホラー系統の短編7つで楽しませてくれます。もともと沖縄はガジュマルに住むというキジムナーという精霊などがいたりするので雰囲気に合っているのでしょう。7つの話の中にはおとぎ話のようなものもあったりして様々な物語が恒川ワールドを醸し出してくれました。
2018/12/23
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