人間らしさ 文明、宗教、科学から考える (角川新書)
人間らしさ 文明、宗教、科学から考える (角川新書) / 感想・レビュー
うえ
「悪魔憑きには明らかに固有の症状があり、精神疾患とは異なります。たとえば統合失調症の患者が悪魔祓い師のところに行っても「これは悪魔憑きじゃないから病院に連れていきなさい」と言われるのです。私なりに説明すると、悪魔が憑くのは三つの関係性が失われたときです。一つは人と人との関係であり、二つ目は自分の心と体の関係であり、三つ目は人と宇宙の関係です。ここで宇宙と言っているのは人を超えたもの、たとえば仏様や神様のこと…神も仏もない状態、つまりこの世の中身の置き場所がない状態になると悪魔が憑くようにできているのです」
2020/04/17
skunk_c
東工大にリベラルアーツを組み込もうとしている文化人類学者が、データ化が進む「個人」が「ロボット化」しつつある現代に対し、いかに人間らしさを「取り戻す」かを説いた本。ご自身のフィールドであるスリランカの悪魔祓いと「共同体」的癒やしは面白い視点で興味深かった。また、新自由主義的拝金主義に対する強いアンチは共感する。だが、終章の東工大での試みについては、ちょっと理想論かな。関わる教授達が著者と同様の問題意識と熱意を持たなきゃ難しいのと、そもそももっと幼少時に「人間的感覚」を磨いていない限り、厳しいんじゃないか。
2015/10/09
あっくん
読友さんが読んでらしたのを見て気になって購入。思いがけず親愛なるチャーリー・チャップリンの写真が入った帯に迎えられてご縁を感じた。そもそもこのタイトルが気になったのも、独裁者での最後の演説で人間と希望と平和を訴えるスピーチの影響があったかも知れない。「データ化される個人」「悪魔祓い」「農耕民の社会」と、そんな連帯があるのかとハッとする内容だった。代わりが利く存在と思う中ではご縁も掴めない。世界をよりよいものにする事が網の目のように広がる、なんて楽しいんだろうと希望が沸く。私も何か行動したい。
2017/09/13
nizimasu
タイトルは堅苦しいけど帯にチャップリンのモダンタイムスの写真が出ていてピント来たので読んでみた。チャップリンが時計の歯車になる描写から冒頭著者が教鞭をとる東工大の生徒が女生徒から「人間味がない」と指摘されるエピソードから始まる。その理由を「人間がロボットであっても言い方が変わらないような人たち」といわれたことが本のアイディアにある。この人間味を感じないというのは何か。そこに人間のかけがえなさや本質論と構築論などの議論もイチイチ面白。中でも妻が女子アナだという著者の一期一会の出会いこそ人間らしさ。珠玉の言葉
2016/01/06
くらーく
序章、面白いね。東工大生に対する女生徒の見方。まあ、そんなもんじゃないかねえ。逆もあって、何を言っても伝わらなかったり、相手の話が冗長で、結論は何?って思うもんじゃないの? とりあえず「かけがえのない人間」で、上田先生のお考えは分かった気になっている。 東工大が、上田先生や若松先生等でリベラルアーツセンターを作ったのは、英断だと思うわ。理系頭に、文系の思考力と芸術系のセンスを加えて、まぜこぜにすると、素晴らしい若者が出来るんじゃないかねえ。期待するわ。
2021/12/24
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