舞踏会・蜜柑 (角川文庫 緑 33-4)
舞踏会・蜜柑 (角川文庫 緑 33-4) / 感想・レビュー
優希
どの作品も弱い面がちらほら見えますが、何処かほっとする要素が含まれているような気がしました。芥川の作品で少しの安らぎを味わえるのも魅力です。
2023/03/20
めしいらず
拭いきれぬ疑惑は自責の念の仕業か或いは自己欺瞞か。その行為は当人ですら判別がつかぬ「疑惑」。予想を裏切る巧みな展開がまるで映画のよう。己も知らぬ心の中を炙り出す語りもまたマジカル「魔術」。やはり芥川。中編になると…「路上」。いかな高尚な芸術も高邁な精神も切実なる生活の実感の前では容易に色褪せてしまう可笑しみ「葱」。人生の中の、花火のようなその一瞬の煌めき。アオハルかよっ!「舞踏会」。言わずもがなの白眉。その橙色の行方の残像までもが目に浮かぶよう。淀んだ心と真っ直ぐな心。二人の悲しみの対比が鮮やか「蜜柑」。
2020/05/23
メタボン
☆☆☆★ やはり芥川は長編は不向きなのか「路上」の評価は低いが、芥川の時代の学生ってこんな感じだったのかなあと想像できて面白かった。立札のいたずらのつもりが現実に竜が出現する「竜」と「鼠小僧次郎吉」のオチはやっぱりなと思った。濃尾大地震の際、がれきに埋まった妻を助けられずに<安楽死>させた夫の心情は果たして「疑惑」。
2019/09/13
みうか
『蜜柑』語るほど読んでないけど芥川の中でも特に好きな短編作品。汽車の座席から一歩も動かないのに、トンネルの入り口と出口で色彩がガラリと変わり面白い。モノクロのショートフィルムがカラーに転じる瞬間を見た感覚。燻る煙の中に鮮やかな蜜柑がポンポンポン!と弾け、曇天の心に甘酸っぱい果汁が広がり、ホッとする。
2017/02/25
kochi
北村薫『太宰治の辞書』刊行記念読書。大正8年頃の芥川の作品を集めたもの。やはり、表題作が心に残るか? 「舞踏会」については、『太宰治の辞書』を読んでいただくことにしてf^_^; 、「蜜柑」は、漠然とした冒頭から、鮮やかなラストの展開まで、ただ汽車に乗っていただけなのに、短編ならではの醍醐味がある。未完の「路上」は続けて書かれていれば、面白い話になっていたかも。
2016/01/10
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