恩讐の彼方に (角川文庫 緑 34-3)
恩讐の彼方に (角川文庫 緑 34-3) / 感想・レビュー
ASnowyHeron
どの作品も人間の内面をさらけ出し、痛々しくも人間味にあふれていた。解説に著者の履歴と共に当時の文壇について触れられていたが、その世界の人間模様もまた人間の内面を如実に現していたのだろう。
2016/04/17
とも
初読み、菊池寛。長らく積まれたまんまになっていた本書を重い腰を上げながら手に取った。…けど、なんて読みやすいんやろう。なんて面白いんやろう。今風のドンデンもなけりゃ、ミスリードに気を付ける必要もない。そんなの必要なく面白い。表題作の「恩讐の彼方に」は特に秀逸。 他にも「恩を返す話」「忠直卿行状記」も秀でた話。「入れ札」も「俊寛」も面白かった。 なんや、どの章もほとんど全部面白かったんやん。
2018/04/27
ge_ha
初めての菊池寛でした。作者が自信の小説観を書いた評論によると、心を打つ小説には内容的価値が必要だそう。うまく書いて芸術的価値のみはあるけど内容的価値の無い小説は心を打たないってこと。内容的価値とは端的に言うと、お話の素材の良さということ。確かに良い素材ばかりを用いた短編ばかり。すべて歴史小説。史実そのままではなく、菊池寛がうまく素材を料理したおいしい短編ばかりでした。やや深みに欠ける気がしたけど心はうたれた。
2013/04/07
ちろる
「人間」が詰まっていた。目眩がするほどだった。まず『恩讐の彼方に』。主題である恩と讐、これらは相反するものでありながら相殺されることはない、全て蓄積し、背負ってゆくしかないのだという実感が、ずしんと胸にきた。全て面白く、苦手だと思っていた歴史小説も楽しめた。『俊寛』、とても好きだ。そうなるのか、と思った。そのあとに『三浦右衛門の最後』でしめた編集も好きだ。生の肯定。最後に巻頭に戻って改めて読んだ直筆の「小説は作家がいかに人生に處したかの報告書であり、またいかに處すべきかの意見書である」という言葉も染みた。
2021/09/30
taku
罪を犯した過去は変えられないが、未来は変えられる。最後に許されたのだ。
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