さわらびの譜 (角川文庫)
さわらびの譜 (角川文庫) / 感想・レビュー
chiru
新年一冊目の本。物語の中心は、互いを思いあう姉妹。弓矢小町と呼ばれる姉が密かに慕う相手、清四郎と妹との縁談。この運命だけで辛いのに、凛とした感情を崩さない姉が美しい。結婚相手を自分で選べない時代の困難な恋愛がシンプルなだけに心を刺してくる。姉と清四郎の、ふたりにしか理解しえない、誰も入り込むことのできない絆が清らかで崇高でした。命を賭けて愛する人を守る姿は、江戸時代のロミオとジュリエットかも。弓術に真摯に向きあい何があっても後悔しない。だからこそ人生には価値があるんだって思う。 ★4.5
2020/01/05
Lara
久々に爽快感と共に、感動を覚えた葉室麟・初作品でした。最後は、二組のカップルが誕生し、ハッピーエンドとちょっと出来すぎの感あり。鉄砲衆に襲われた、伊也、初音達を弓矢で退治し、黙って去る樋口清四郎は、なんだか007か、ゴルゴ13を彷彿させる格好良さに、痺れました。それにしても、有川伊也という弓道家は、自己主張を持った芯の強い今時の女性。登場する人物、父親・将左衛門、妹・初音、浪人・新納左近、もちろん樋口清四郎と好人物に囲まれ、いつまでも読み続けていたかった。
2020/01/04
優希
とても爽やかな読後感でした。姉妹の揺れる想いが伝わってくるようです。派閥抗争に巻き込まれていくのは時代ならでしょうね。それでも高潔な志が清々しかったです。
2021/09/26
つねじろう
ぴさるくさんのレビューから。直ぐな心から射られた矢はひょうと音なりしてただただ真っ直ぐ飛んで行く。そんな只管なお話。こなた日置流雪荷派有川伊也、かたや大和流樋口清四郎。競い合い惹かれ合う二人に次々に襲いかかる艱難辛苦。流派争いにお家騒動まで加わり絶対絶命に陥る二人。「わたくしの想いは一筋の矢のごとく一点の濁りも歪みもない直ぐなるものにございます」と言う伊也の想いと清四郎の決意が込もった千本の矢の行方は?地味かなあって思ったけどスリリングな展開とドンデンも効いていてとても楽しめるお話でした。妹の初音が可憐。
2016/06/03
Gotoran
扇野藩(架空)の重臣で、かつてはその藩の弓術師範を務めた家柄の有川家の娘・伊也と妹・初音。現在藩の弓術師範の磯貝八十郎の弟子樋口清四郎。弓術を通しての伊也と清四郎の勝負と男と女の恋物語。藩の中に渦巻く派閥抗争の中に姉・伊也と妹・初音、全てにおいて対照的な二人の女性が生き生きと描かれている。他葉室作品でも窺い知ることができる”人としての潔さ、覚悟をもつことの美しさ”が描かれている。素晴らしい読後感を味合うことが出来た。
2023/01/28
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