アトミック・ボックス (角川文庫)
アトミック・ボックス (角川文庫) / 感想・レビュー
mocha
瀬戸内海の島々を飛び石のように跳躍する逃亡劇。社会学者であるヒロイン美汐の身体能力と決断力、倫理観が痛快でかっこいい。池澤氏の編纂や翻訳のもの、エッセイは読んでいるが、オリジナル小説を読むのはこれが初めて。原子力や国益について考えさせられる3.11後の作品だが、あくまでエンタメ小説としてテンポよく読めるのがいい。ただ「パパ」という呼称がなんだかしっくり来なかった。
2018/07/29
★Masako★
★★★★ 池澤さん初読み♪ 「人生で一つ大きな間違いをしてしまった」という言葉と共に、国家機密の資料を娘の美汐に託し癌で亡くなった父・耕三。父はかつて国産原子爆弾の製造に関わっていた。その資料を押収しようとする警察と資料を持って逃げる美汐。その逃亡劇が臨場感に溢れ、ハラハラドキドキ。知的で勇気があり行動力もある美汐のキャラがいい。東北大震災後に書かれた作品だけあって、原子力の怖さもより伝わってくる。国家の論理と一人の人間の論理。終盤の黒幕へぶつけた美汐の熱い思いが爽快!面白かった!【図書館本】
2022/02/08
すがやん
キトラ・ボックスを先に読んだせいで、大まかなあらすじを知ってしまったのが残念。知らなければもっと楽しめただろうに。女性主人公が映画のような冒険をしていくが、根底にあるものは重くて深い。「人の安全保障」と「国家の安全保障」の違いに考えさせられる。
2017/08/02
James Hayashi
東日本大震災後に毎日新聞に連載されたサスペンス小説。冒険であり逃亡劇であり核開発とその秘密保持。追ってくるのは日本の公安。実の父に30年に渡り監視が付いていたその理由と、父に託されたミッションを行使する娘の取る行動は、読み易いが様々な知識を披露してくれる。核を持つことはもちろん、核を開発するだけでも大変なリスクを背負うことになる。期待した以上に面白かった。
2018/06/18
yumiha
なんちゅうひどいパパや。娘の平穏な幸せを願う親なら、自殺幇助も、極秘扱いのFDを委ねることもせえへんと思う。おかげで、美汐は公安に追われる逃亡者となり息詰まるサスペンスが展開。エンタメの池澤夏樹か?と思っていたら、国産原発開発プロジェクトという奇抜な(でもあり得るなあ)が大きく関わっていた。「核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持」という外務省の文書を示されたら納得する。政治家にとってはタダの人数でしかない国民だけれど、美汐は、その一人として「意地」と「納得」のため、パパの無念を晴らそうとする。
2018/01/18
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