33個めの石 傷ついた現代のための哲学 (角川文庫)
33個めの石 傷ついた現代のための哲学 (角川文庫) / 感想・レビュー
白義
「傷ついた現代のための哲学」と題されているが、しかしその実態は「全ての傷を無化しようとする現代」への対置として思考の意義を問いかける哲学エッセイ集である。例えば、監視カメラのような監視技術の発展、あるいは相対主義の発展と裏腹のカルト宗教の台頭など、そうした時代の傾向に「無痛文明」と名をつけた著者の論考の延長にある文章が並んでいる。自分の中の差別意識や戸惑いまでストレートに表明して行きつ戻りつの思索を重ねていく誠実な文章に示唆されることは多いが、そんな著者の持ち味を生かすには一文が短すぎるのも否めないところ
2019/06/23
ayumii
被害者が人間なら加害者も人間なのだ。どちら側にも、不在を悲しむ家族がいるかもしれないということに想像をめぐらせること。難しいかもしれないけれど、そうしなければ憎しみの連鎖は止まらない。臓器は親族に優先的に提供するという考えが、人種や宗教団体への差別的な考えと一直線につながっているという言葉にドキッとした。自分と反対側から物事を見ている人と、本当の意味でわかり合うことはできるのか。いろんな意味で考えさせられることが多かった。
2020/07/22
江藤 はるは
今ここにある何か 目を閉じても零れそうな気がして
2020/01/24
まっちけん
森岡さんはいつも「迷って」いる。そしてその「迷い」や違和感を隠さない。そんな「迷い」に一応の答えを出さない。出さないで迷い続ける。それが哲学なんだと思うと、苦しいだろうなって思う。分別よく生きていくより、迷いを迷いのまま持ち続けて生きる方がよっぽど苦しいと思う。福知山線事故の運転士を慰霊の対象にすべきか否かは、重い問題だな。それと、森岡さんの自身が捨てたはずの方言に対する思いが、僕が目を背けていたことを見せつけられたようでちょっと苦しかった。
2019/04/30
しゅんぺい(笑)
ずっと読みたい読みたいと思っていた本が文庫化されたので、この機会に読んだ。ここまでのショートエッセイとは思わへんくって、もっと長い文章が読みたいと思ったけど、森岡さんの言いたいことは伝わってくる。被害者三十二個の石に加害者を入れて三十三個めの石を加えたっていうエピソード、感動的。さすがの森岡さんのアンテナ。
2017/01/31
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