マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代 (角川文庫)
マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代 (角川文庫) / 感想・レビュー
のぶ
海外の古典ミステリーを、歴史や海外からの観点から解説したエッセイと言うか評論集。「時の娘」「薔薇の名前」「ホームズシリーズ」等で自分が読んでいたのは、ほんの数点。書いてある内容はかなり専門的で難しい部分もある。だが、つまらない事はなく、むしろ未読の本に対しての読書欲が湧いてきた。著者の門井さんは新直木賞作家。日本の歴史小説を中心に発刊しているが、この博識ぶりには驚いた。西洋の歴史から聖書の知識まで、あらゆる方面の知識を持っておられる。本書を読んでこれからの門井さんの著書の読み方が変わると思う。
2018/03/06
HANA
『時の娘』「ホームズ」『薔薇の名前』『わたしの名は赤』。歴史ミステリを手掛かりに、ミステリの歴史にメスを入れていく労作。ホームズと『薔薇の名前』以外は未読だが、それは読む妨げにならずむしろ他を読むのが楽しみ。ピラミッド状の心理や印象派との関係とか論旨に強引な部分を感じるけど、それでも手妻の如くミステリを紐解かれていくと、その鮮やかさに瞠目させられ気にならなくなってくる。特に面白く読めたのは人称代名詞とミステリの関係。ミステリの歴史を解きほぐしていく、この本自体が一個の歴史ミステリとして楽しむ事ができた。
2018/03/14
ユメ
門井慶喜さんによるミステリ評論。面白かった!美術探偵シリーズの神永による華麗な謎解きを聞いているようで、大興奮。名作を題材にミステリという分野が誕生した瞬間とその理由を探ってゆく。長い文学の歴史の中で、ミステリが近代に産声を上げたのはなぜか。美術、宗教と様々な角度から門井さんが読み解いてゆくのに知的好奇心を刺激される。辿り着いた結論には膝を打った。門井さんの博識ぶりには舌を巻くばかりだ。また、ミステリと歴史小説を人称から考察するという試みも興味深い。ホームズがいかに優れたミステリであるかがよくわかる。
2018/08/08
はるき
有名なミステリ作品を題材に歴史と風俗を語る。こういうの私大好きです。著者の博覧強記ぶりに驚くばかりでした。
2018/03/14
瀧ながれ
「緋色の研究」を読んだときに気になった部分について、「ミステリの文体(視点・人称)」という形でしっかりと語っているのが興味深かった。たしかに、小説もミステリも、完成形で誕生したわけじゃないんだ。ミステリ・歴史ミステリの成り立ちと成長がわかりやすく書かれており、「時の娘」も「薔薇の名前」も読んだことないわたしにも、楽しく理解することができた。そして、いつか両者を読み通そうと決意を新たにしたのであった。…ホームズと産業革命の関係、ゴシック小説とはなにか、など、おもしろい部分が多くて、いずれまた再読します。
2021/05/28
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