これからお祈りにいきます (角川文庫)
これからお祈りにいきます (角川文庫) / 感想・レビュー
さてさて
人が何かに強く『お祈り』をする時は、その何かのこと、そして、誰かのことを強く思い、さまざまな努力をします。そんな中で『祈り』を捧げるという行為は、そんな祈りを捧げる主人公たちの行動を、そして、心のあり様も変えていく、そんな物語がこの作品には描かれていたのだと思います。一種の”青春もの”とも言える世界観の中に、『祈り』をテーマに書かれた二つの物語から構成されたこの作品。冒頭からは全く予想できないとても爽やかな結末に、ほんの少しだけれど確かに一歩前に進むことのできた、そんな主人公たちの未来を感じた作品でした。
2022/07/11
修一朗
ここのところ,‘お仕事小説’でない方の津村記久子さんを読んでる。これはかなりファンタジーに寄った津村さん。そういや浮遊霊が登場する作品もあったしこっちでもやっぱり津村記久子の文章だ。主人公も,お話も淡々と進む,けど最後に人の善意に胸が熱くなる。作品は二つあってどっちもよかった。特にサイガサマの方は町の人みんなで臓器やら体の一部を作って捧げるなんてユニークで面白いじゃない。「神通力弱めのカミサマ」ってところがホントにらしいなぁっていう造形。よかったです。
2023/08/30
じょんじょん
津村記久子さん初読み。なんと芥川賞作家なのですね。本作品は男子高校生と男子大学生が主人公の二編。共通するのは「祈り」。本作品を開いて、まずはびっしと字に埋め尽くされているのにびっくり。読み始めは手ごわい。知らない言葉が多くて、「ウィッカーマン」調べちゃいましたよ。男子高校生は家庭、そして街の独自信仰祭にいら立ち、怒りをもって暮らしている。男子大学生は恐怖と不安のなかで京都にこもってくらしている。主人公たちに共感。高校生の頃の自分を回顧しました。不思議な魅力に巻き取られる作品です。著者の他作品も読んでみたい
2020/02/07
papako
これもお仕事小説じゃない津村作品。『サイガサマのウィッカーマン』ある土地限定の不思議な宗教のお祭りに関わる高校生のつれづれ。味わい深かった。なんか好きです。願いの変わりに何かを無くす人たち、そしてそれを淡々と受け入れている様子が語られる。人は何を願い、何を無くしたくないのか。ままならない。それでもサイガサマは優しい神様なんだと思う。『バイアブランカ〜』の方は恋愛小説か?津村さんの朝日新聞の夕刊小説につながる感じです。夕刊小説、どこにいくのか追いかけなきゃなぁ。
2017/03/01
dr2006
この主人公の気持ちを次から選びなさいという国語の設問と解答が連続してる様で、津村さんは一人称の心理描写が秀逸だと思う。収録2篇のうち「サイガサマのウィッカーマン」が良かった⤴身体の一部を捧げる代わりにクリティカルな願いが叶うという「サイガ様」が信じられている町の物語。町にはサイガ様に見立てた大きな籠を作り、その中に身体の一部を模した申告物を入れ、焚き上げるお祭りがある。主人公のシゲルは町の公民館でアルバイトをしていた。成行きで、祭りの準備を手伝うことになったのだが…。ニッチな題材なのにやたら引き込まれる⒲
2022/09/30
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