完全版 1★9★3★7 イクミナ (下) (角川文庫)
完全版 1★9★3★7 イクミナ (下) (角川文庫) / 感想・レビュー
KEI
下巻に入ると著者の舌鋒はますます鋭くなる。八紘一宇の元に近隣の国を侵略し人を人として扱わず、隷従させ、殺し、掠奪し、強姦する事が当然だとしていたニッポン。敗戦後も責任を取らず、謝罪もせずにいた事に愕然とする。特に戦争責任について問われた昭和天皇の言葉「そういう言葉のアヤについては、私はそういう文学方面はあまり研究はしていないので、よくわかりませんから、そういう問題についてはお答えが出来かねます」それに迎合する戦後の姿が今に繋がる怖さを感じた。大元帥陛下として退位すべきだと父と論争した事を思い出した。
2018/11/25
jahmatsu
下巻でさらに深く斬り込んでニッポンを解剖していく辺見氏、活字に打ちのめされ続け、最後まで読み終えるのには時間を要した。最後にニッポンの恥というワードを痛烈に感じる。
2019/03/12
sashi_mono
作者は「苦痛にさらされた他者の痛みを想像する」歴史的時間に身を投じながら、過去と現代(未来)、戦前から戦後までひと続きに連なった、二ホン的特殊性を暴き出す。とりわけ堀田善衛の小説の文句を引きながら、現在の時代状況は「人間の約束事はすべて壊れ去り剥ぎとられ、共通の約束の一つもない生活」を前提としており、それはむしろ「おそろしく基本的な時代」だと考察した箇所が印象深かった。
2019/12/08
おおにし
辺見さんの筆は衰えることなく下巻へと続き、読んでいるとどんどん疲れてくる。気分もどんどん重くなる。でも最後まで読み終えることが日本人の責任であると思いなんとか読み終えた。感想はいろいろあるが、特に印象的なのは戦争責任について問われた昭和天皇の発言。「そういう言葉の綾については、私はそういう文学方面はあまり研究していないので、よくわかりません…」昭和天皇は戦争責任については何も語らずに亡くなったと思っていたが、これは余りにたちが悪い発言。日本の戦争責任を曖昧にしてきた根源はここにあると思う。
2017/07/23
浅香山三郎
(上巻から続く)著者の思索は、生前の父に何故中国でのことを問はなかつたのかといふ点に及び、戦中・戦後の日本社会を貫く体質をも問ふていく。その体質を鋭く衝ひた茨木のり子の「四海波静」に触れ、更に「未来に過去がやってくる」といふ暗い予兆を見出してゐる。記憶や体験が忘却され、過去が曖昧にされて、無味乾燥の歴史に作り替へられてゐく過程への、鈍感・無自覚をこれほど深く抉つた本は、近年他にないやうに思ふ。
2024/01/25
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