スウィングしなけりゃ意味がない
スウィングしなけりゃ意味がない / 感想・レビュー
紅はこべ
ユダヤ人迫害をメインではなく、第二次大戦中のドイツを描いたのは珍しい。ドイツとジャズって意外な組み合わせだった。ユダヤ系じゃない富裕層もゲシュタポの標的となっていたのか。佐藤亜紀さんの訳した歌詞がかっこいい。演奏者としての才能はなかったけど、プロデュースや商売の才能があったエディ、自国をお馬鹿な帝国と言い放てる見識、かっこいいよね。経済をきちんと描くのがこの作家らしい。ナチに膝を屈したと見えた父の真意をエディが悟った時は泣けた。デュークと再会するかと思ったが…。
2017/06/29
風眠
もしも日本が戦争を始めたとして、アイドルやバンド等の音楽や文化を全部禁止します、と言われたら、私達は黙って従えるだろうか。つまりこの小説で言っている事って、そういう事なのだ。第二次大戦、ナチス政権下ではジャズは敵性音楽だった。そんな理不尽と抑圧と全体主義に対して「誰得だよ」とか「うぜえ」とか言いながら、ジャズを手放さない不良少年達。こんな風に文体を1940年代から現在にスイッチさせた佐藤亜紀のセンス、本当に素晴らしいと思う。だって、ナチス政権のバカバカしさや戦争の愚かさを、身近に感じる事ができたのだから。
2018/01/22
雪風のねこ@(=´ω`=)
戦場のコックたちと似たニュアンスかなと読み始めて、ドイツは敗戦国だったと思い直す。言い回しが小気味良く適度な刺激で読み進められる。エディは、イロニーは無いと嘯いているけれど、パーティを催し、海賊盤を作り、工場も運営し…。それが彼のイロニーでは無いかと思う。世は何時もお前より一枚上手だ、と叔父に言われるが、ゲッベルスが自前のバンドを持ち…という件から、真理としてさらに一枚上手だったと言える。人間の本能的な喜びは制度や暴力では止められない。止める側が止めてないからだ。そういうイロニーが込められた作品である。
2017/04/27
🅼🆈½ ユニス™
ナチス政権下のドイツで金と時間だけを持て余すボンボンの悪ガキどもが、敵性音楽と呼ばれるジャズに夢中になって仲間たちで享楽的な毎日を送る。恵まれた環境の中で不良を気取り、ゲシュタポを馬鹿にしていた奴らが時代の嵐に立ち向かう姿を著者は立体的に独特な描写で伝えて来る。戦時下のドイツの若者の状況を始めて垣間見た気がした。中々面白かった。同じ時期を背景に描いた’また、桜の国で‘も是非読んでみたい。
2018/12/27
seacalf
ナチ支配下のハンブルクを舞台に、成り上がり経営者の御曹司、斜に構えたお坊ちゃんが主役の物語。jazz狂いの悪童ではあるが、ナイーブさを持ち合わせた主人公エディは憎めない奴。現代風にした台詞まわしに若干違和感を覚えるが、ストーリーはがっつり濃厚。洒落っ気が利いた若者達の青春物語に、戦争の醜さを絡めていく非常に上手い小説。脇を固める登場人物達もエディ以上に魅力的なくらいだ。ただ、賢しく上っ面を滑るように物語が進行してゆき、自分の肌には合わなかった。上手いんだけど、物語にスウィングできない。好みの問題かな。
2017/08/18
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