敵の名は、宮本武蔵
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敵の名は、宮本武蔵 / 感想・レビュー
yoshida
「宇喜多の捨て嫁」で注目した木下昌輝さん。本作では宮本武蔵と立ち合う武芸者達の姿を通じて、新たな宮本武蔵像を描く。激しい剣撃の攻防の中にも、哀切の光が儚く瞬く。武蔵の左脛にある龍のような痣。そこから繋がる武蔵の出生と、様々な人達の想い。クサリ鎌のシシドの純粋な千春への想い。再び出逢うシシドと千春の何と哀しいことか。最終章で吉岡憲法と老いた無二の邂逅の場面。一心に弁助に愛情を注ぐ無二の姿は、「宇喜多の捨て嫁」で宇喜多直家の晒しを洗う母の姿と重なる。重なるけれど、私は好きですね。木下昌輝さんの作品、注目です。
2017/10/29
starbro
木下昌輝、3作目です。第157回直木賞候補作としては、『BUTTER』に続いて2作目です。ここ数年、花村萬月版『武蔵』を読み続けていますが、まさに本作は対局のような『武蔵』です。花村萬月版『武蔵』が陽だとすると、本作は完全な陰です。木下昌輝の作品らしく、全編に血の香が漂っています。武蔵の露出が必要最小限というのも、斬新です。直木賞候補作らしく読み応えはありますが、現時点では『BUTTER』に軍配をあげたいと思います。
2017/06/22
ナイスネイチャ
図書館本。宮本武蔵と戦い敗れた者たち視点の連作短編集。武蔵はほとんど登場せずそれがまた武蔵の存在を妖艶に際立たせる。巌流島で終わるのではなく、武蔵の絵で終わるのも最後ぐっときた。直木賞どうだろう?最近は歴史物は苦戦なので(時代小説は受賞しましたが)選んでほしい。
2017/07/03
雪風のねこ@(=´ω`=)
面白い!と咆哮した。表題の通り武蔵の敵の視点から描く手法と、短編連作で人が因縁が繋がっていく様は本当に面白い!勝負である以上敵が居なければ成長は望めない。凄まじい剣戟の様に打ち込む事で武蔵という人物を描いている。様々な文献を元に物語を組み立てている為、これまでのイメージと掛け離れているがとても新鮮に感じた。そしてその最後の敵とは。想い人と師匠の遺志を自分なりに汲んだのだろうなと感じた。それでも人々は武蔵は、生きて征く。不思議な縁に繋ぎ繋がれ、糧となり糧となられ、引き継がれてゆく。(続く
2017/07/04
いつでも母さん
『宇喜多の捨て嫁』で、この作家から目が離せなくて読んでしまう。惹かれる理由は視点が違うからだろうか。今回だって、直球勝負ではない。変化球の連続なのだが、そこから武蔵像が浮き上がるのがいい。宮本武蔵のことなど沢庵和尚に巌流島しか浮かばないが、これは武蔵の孤独とその父無二の狂気が描かれていた。連作7編、どこまでが史実かは知らないが哀しみが伝わって読了した。木下作家、侮れなくて多分、次も読むなぁ・・
2017/04/08
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