人間の顔は食べづらい (角川文庫)
人間の顔は食べづらい (角川文庫) / 感想・レビュー
夢追人009
初読み作家・白井智之さんのデビュー作となる異端派の禁断の近未来ホラー本格ミステリですね。本書は横溝正史ミステリ大賞に最終候補として残りながら結局は受賞を逃されたそうで、その辺は中山七里さんの「魔女は甦る」の時と事情が似ているなと思いますが、こちらの方がえげつなさは数倍も上でしょうね。まあとにかく徹底的に不謹慎な内容ですので小説の目指す方向性が選考される方の批判を浴びたのでしょう。でも道尾秀介さんと有栖川有栖さんの努力によって本書が出版された事は誠に良かったですし、こんな過激な本は今だから出たのでしょうね。
2022/03/13
そる
エグい。設定からしてエグいしクローン人間を殺す、加工する、虐待する、また性描写においても、表現がエグい。でもパンデミックにより家畜の肉が食えなくなり、栄養失調で成長障害にならないために人肉を食う世の中に⋯って、もしかしたらそういう社会になってしまうかも、と思ったらゾッとする。その倫理観や人間のエゴに一石投じてる本だと思った。ゐのりのトリックは途中で気付きましたがその他は分からなかった。意外な犯人だった。「「(前略)おれはただ、命乞いもできないあいつらの声を、能天気な人間たちの耳に届けたいだけなんだ」」
2020/01/25
三代目 びあだいまおう
タイトルからして!でも読み進めると日本の近未来に『絶対ない』とは言い切れないリアリティーを感じます。現に最近ニュースで『新型コロナウイルス』の感染拡大が話題に。本作も新型コロナウイルスが人や哺乳類、生き物全般に蔓延しやがて家畜等の肉食ができなくなり慢性的な食料不足に陥る日本が舞台!そこで考えられた安全な肉食対策が『自分のクローンを生産しそれを食べる』という行為。どう?絶対無いと言えます?ミステリーとして怒涛の展開。読んでいて登場人物に抱いていた違和感が結末でスッキリ回収。良作!でもこんな時代は嫌だ‼️🙇
2020/01/20
徒花
思ったよりよかった。法律によって人間のクローンが食用として認められている社会で起こる殺人事件をめぐるミステリー小説。中盤あたりはいろいろな人が探偵役になって謎を引っ張り続けるのでモヤモヤ感が続くが、最後の最後ですべてのなぞがひとつにつながり、解決する。驚きを得たいなら、いろいろな意味で末尾にある解説は目にしないほうがいいかもしれない。ちなみに著者は東北大学出身で、宮城県が舞台になっている。
2018/07/09
hit4papa
人間以外の動物がウィルスによって死滅し、ひとのクローンを食する事が是となった日本。その法案の反対派議員が殺害されたことに端を発し、隠された陰謀が明らかになるという展開です。異常な世界の中、異常な犯罪が発生するというミステリ。ひとつの世界観を作って、その制約の中でトリックを仕立てる力技が良いですね。クローンを食料へと解体していく様はグロテスクで興味を惹きましたが、作中人物たちによる犯人当ての討議あたりで飽きがきました。そのあたりを我慢すればラストは驚きです。テンポよければなお良しというところでしょうか。
2018/03/18
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