天翔ける
天翔ける / 感想・レビュー
いつでも母さん
正直、途中まで頁をめくる手が進まず難儀した。徳川の世もその後の明治維新でも『派閥』はあって・・それは現代にも続いているんだなぁ。歴史小説は誰に気持ちを置くかで受け止め方は大きく異なる。龍馬暗殺の指示あたりでは、やっぱり慶喜は嫌いだと思ったりする単純な自分にちょっと笑えた。松平春嶽、名前は知っていたけれど、この人物の参謀や思いを同じくした同志の死・・結局時代は彼らを選ばなかったのだなぁ。だが、逆に後の世で支持されたりするのだから歴史は面白い。大政奉還から約150年!夢のまた夢の様でもある。
2018/02/02
starbro
葉室麟は、新作中心に読んでいた作家でした。松平春嶽の名前は知っていましたが、主人公の物語は初めてです。松平春嶽は英俊で、福井藩は幕末に力を持っていたんですね。遺作に相応しいタイトル、主人公、テーマ、清々しさを感じました。後、何作か新刊が出版されるので、噛みしみながら読みたいと思います。今までは著者は多作だと感じていましたが、残り少なく大変残念です。
2018/01/23
とん大西
例えば天下盗りに邁進する秀吉の傍らに秀長がいたように、いつの世でも、主人公の周りに必ず存在した名バイプレーヤー。それは現代の会社組織でも一家庭でもいえることで…。-分相応で地味ながらも己れの役割を理解し堅実に確実に務めを全うする。スポットライトのあたりかたは西郷、龍馬に及ぶべくもない。劇的過ぎる生涯を送った幕末の英傑たち。彼らと深く絡み合った春嶽の人生もまた激動の人生。西郷とは袂を分かった。龍馬は死んでしまった。スポットライトが彼らにあたる舞台袖で懸命に時代を支えていた名バイプレーヤーがいた。
2018/03/11
chantal(シャンタール)
尊王攘夷、開国と様々な思想が入り混じり、安政の大獄や天誅など、自分と異なる思想の人たちを殺傷する、今で言うテロ行為が横行した混迷の幕末。「私」を捨て、「公」の政を行わんと信念を曲げなかった松平春嶽。御三卿出身の徳川一門でありながら、国のためなら徳川家がその権力を手放す事も構わないと邁進するその潔さ。多くの人間が自分の権利や権力に固執し、狭義の愛国心を振りかざしたあの時代、春嶽の生き様は清々しく潔く美しい。こんな政治家が国を率いてくれたなら、どんなに幸せだろうかと嘆きたい気持ち。
2018/03/16
キムチ
表題は春嶽辞世の句からとったとある・・≪明治文明開化の時を経て明治中期を迎えた彼の胸中に帰去来するあまたの人々・・舞い立っていった彼らの姿を思い浮かべて≫が脳裏を巡っての情景でろうか。徳川屈指の出自を持つ春嶽、四賢候の一人でもある。北国福井の殿でありながら江戸に棲み、徳川の治政に心頭を没入する日々。側近の左内・・彼を巡るのは西郷、小楠、東湖・・と又著名な藩士。更に水戸・熊本と知己を得るのだが井伊が大老となった事で運命は反転。海舟・龍馬と関わり、慶喜支持の立場から対立の方向へ。目まぐるしい人の渦が一転して~
2018/05/12
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