幻想の未来 (角川文庫)
幻想の未来 (角川文庫) / 感想・レビュー
優希
鬼才ならではのSFと言ったところです。スケールが大きいメタフィクションとも捉えられますね。進化した人間の未来を幻視していますが、下手すると現実になりそうな恐怖をも感じさせます。この作品が40年以上も前に書かれていたのだと思うと、正直驚きしかありません。表題作がメインという感じで、他の9編はショートショートでしたが、ツツイワールドを凝縮している味わいが何とも言えません。古い作品ながら、新しく感じるのが魅力でしょうか。
2017/09/18
chiru
89ページのVの章まで、核戦争後の放射能被害者たちの話を読んでると思ったら、突然、霧が晴れるみたいに何が主人公なのかはっきりわかって、すごい衝撃を受けました! こんなにミステリアスなSFが、何もかも合理的解釈が可能な話に仕上がっていることに驚きました。謎が解けたあと、ラストの『未来』に胸が熱くなって、読み返してしまったほど。壮大で不思議な魅力の作品です。★5
2018/03/15
おにく
表題作は筒井さんの本気度の高いSFです。核戦争後、人類は死に絶え、過酷な環境を生き抜くため、より環境に適した異形の生物が地上に出現する。この150ページ余りの中編は、これまで余り読んだことの無いジャンルで、わずかにSF作家のジェイムズ・ティプトリー・ジュニアや、クトゥルフ神話で有名なラヴクラフトの短編“アウトサイダー”を思い浮かべました。終盤には一行の文章の中で数時間…数日、あるいは数百年の時が流れており、その壮大なスケールに、あくせくした日常が些細な事のように感じられました。お気に入りの作品です。
2017/10/24
Kajitt22
筒井康隆の作品は、数編しか読んでいないと思うが、シュールでブラック、スラップスティックな印象を持っていた。昔読んで題名が頭の片隅に残っていた『白き異邦人』が氏の著作と判明し再読したが、筒井康隆らしからぬ、リリカルな短編でうっとりと読んだ。満足。表題作『幻想の未来』は壮大な思考がグロテスクな表現で語られる中編。どう考えたらこんな文章になるのか解からないほど飛んでいる。同じ作家が書いたとは思えない。多彩な才能の持ち主なのだろう。
2018/04/25
たぬ
☆4 筒井氏29冊目は半分以上を占める「幻想の未来」など全部で10編。「ふたりの印度人」はやはり最もお気に入りの短編だと再認識。感情の見えない、加えて生身の人間ですらない相手がもたらす恐怖が絶品。スケールに圧倒される「幻想~」は実際の地球も行き過ぎた科学と環境汚染で遅かれ早かれこうなっても不思議じゃないと思えた。
2021/03/15
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