ムーン・リヴァー (角川文庫)
ムーン・リヴァー (角川文庫) / 感想・レビュー
くたくた
『翼あるもの』を読んでから三十余年、作中では10年以上にはなるのだろうか。森田透を囲う島津の愛。今西良を愛しつつも島津に愛されることに安らぐ透。嫉妬と欲情と妄執の果て、殺人に等しい行為でも壊れない島津と透の純愛。どろどろの愛欲まみれなのに、清らかで尊くすら思える二人の最後の時間。癌に冒された島津との最後の壮絶な時間と、透をおいて一人で自死する島津の覚悟。島津を失った後の透の圧倒的な孤独。この喪失を抱えて透がどのような時を生きていくのか、強いて言うならその後は知らない方がよかったな、と。
2022/05/04
くたくた
実際、短期間で数度目の読み返し。この展開に賛否はあれど、私はこの二人が好きだ。この凄烈な愛があまりにも美しく思えて、透が哀れでしょうがない。しかしだな、私は作品中の時系列をけっこう厳密に分析しちゃうほうなんだけど、栗本サンはそういうのが結構どうでもいいタイプなのがツライところもある。たとえば、『朝日』から『ムーン・リヴァー』までは何年なの!島津だけなぜ老化してるんだ!巽が殺されたのはいつだったの?良の裁判はどれだけ掛かって、良は何年収監されてるの?など。まあ、薫サンたぶん何も考えてなかったんだろうけどさ。
2022/05/30
ぐうぐう
栗本薫の最も初期に書かれた長編『真夜中の鎮魂歌』と、遺作のひとつである『ムーン・リヴァー』の間には、三〇年以上の時間が横たわっている。しかし、この二作はあらゆる意味で似通った小説だ。個人的な喜びのために書かれていること、男性同士の愛を描いていること、そして、今西良という人物を中心に物語が綴られていること。栗本薫が生前にあちこちで書いているように、『真夜中の鎮魂歌』の今西良と、いわゆる「東京サーガ」と呼ばれるシリーズの今西良は別人ではある。(つづく)
2019/07/04
ぱぁる
作者が既に故人だということをすっかり忘れていた。図書館の新刊本コーナーで見つけた時、はたと思い出した。このシリーズは、やおい、今でいうBLの話し。島崎62歳、透38歳になってしまったふたりの蜜月が描かれる。作中で、作家としての島崎が描かれているが、「この変態野郎の愛の告白と、代償行為のセックス妄想をいやというほどみせつけ」る妄想と願望の作品ばかりを書いているらしい。これを踏まえると、ガンに侵された自分を投影してるのだろうかと勘ぐってしまう。私の想像では余りあるからこそ面白いシリーズ。
2018/02/25
まごたく
まだ栗本先生が生きてるような気さえする…亡くなってるんだよなー、そうなんですよ…
2018/06/23
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