木島日記 (角川文庫)
木島日記 (角川文庫) / 感想・レビュー
ざるこ
「奇怪な仮面を被った店主のいる古書店に迷い込んだ民俗学者が自身が未だ構想中の小説を見つけ、その書(日記)をなぞりながら『私』が綴る」形の作品。複雑!だけどおもしろい!折口信夫、柳田國男など実在した人物と歴史、不思議キャラと偽史や妄想がごった煮状態。昭和初期の物騒な雰囲気、奇怪な事件はオカルト全開。ミイラに人魚に偽天皇に青森のキリストの墓。ヒトラーまで!真面目とおふざけ、どっちにとればいいのやら。でも時々入る注釈で真実だと驚くことも。人物や事件が本物なのか?とWikiを見つつ読むのが楽しい。アブナイ作品だ…
2022/07/03
金城 雅大(きんじょう まさひろ)
有名な評論家・マンガ原作者の著者による、昭和オカルト全開の小説。 オカルトテイストなキャラクターや事件と、時間軸や世界線を頻繁に交差させる文体、さらにはまた別の作中作の存在もが相まって、読み始めは相当混乱した。 だが、最初の話を読み終わる頃には徐々に引き込まれて「なんか読んじゃうな…」という感じで読み進め、気付けば読み終わっていた。 なかなか不思議な小説だった。続編も読んでみようかな。
2019/05/01
東京湾
あってはならない物語。民俗学者・折口信夫による、日記とも妄想ともつかぬノートが題材ーという体で描かれる、怪奇と幻惑の物語。百鬼夜行シリーズや帝都物語などが好きな自分にとってはうってつけの代物だった。仮面の古書店主・木島平八郎を始めとする土玉、安江などの奇態際立つ人物や、妖艶且つ無垢な少女・美蘭、「瀬条機関」なる隠密組織の胡散くさげな面々などの魅力的なキャラクターに加え、キナ臭さの漂う時代背景や民俗学の要素などが、妖しげな空気感と影のロマンを構成し読者を引き込む。虚構と現実のバランスが実に巧妙。面白かった。
2017/12/20
瀧ながれ
タイトルになっている木島平八郎と、おもにカメラの真ん中にいる折口信夫の物語のようなのに、どこかに語り手であるもうひとりがいて、現実と夢まぼろしや現在と過去とをかろやかに往き来するので、読み終えて振り返るときちんと説明ができない不思議な作品でした。折口せんせいが困ったおじさんで、木島氏や美蘭嬢に振り回されるのを見ると、なんだか溜飲がさがりますね、ごめんなさい。サヴァン式計算機の悪趣味さに胃の腑が冷えました。八百比丘尼と地下水脈のおはなしはロマンです。
2017/12/13
RIN
グロテスクでエロティック、WWⅡ前の日本で得体の知れない奇人変人が集うオカルティックな物話。素材は良いのに調理がイマイチなのが大塚英志だったなと久しぶりに思い出す。民族学者の折口信夫と仮面を着けた古書店の店主・木島、手に入れた謎の日記を元に折口や木島の小説をでっち上げる某。視点は入れ替わり世界はどちらが表でどちらが裏か曖昧になる。実在の人物と歴史的事実に紛れ込む虚構の人々。偽史はあたかも正史の様に鎮座している。気に入らないのは春洋を蔑ろにして女人への欲情を折口博士に語らせた事。フロイト染みた解釈は不要。
2022/08/12
感想・レビューをもっと見る