過ぎ去りし王国の城 (角川文庫)
過ぎ去りし王国の城 (角川文庫) / 感想・レビュー
bunmei
現実世界とは違う、もう一つの絵の中の並行世界に行き来きする中で、10年前の少女失踪事件と絡めた、宮部みゆきらしいファンタジー作品。でもそこに、現実世界で抱く不満に対して、自分を変えたいと思う気持ちを、並行世界に求めようとする葛藤を描き、人としての生き方やどう現実と向き合うかについて問いかけてきます。やはり、自分の道は自分の手で切り開かなくてはならないということなのでしょう。本も夢中になって読んでいると、本の世界に入り込んでしまうことありますよね。思春期真っただ中の中学生に手に取って欲しい作品です。
2019/09/08
エドワード
中学三年生の冬、尾垣真は銀行で拾った<古城の絵>の世界に<入り込む>ことが出来ることに気づく。同級生の城田珠美、マンガ家の助手パクさんと試みる、<絵の中>への冒険の旅。こういう話はアニメなどにもよく出て来るが、この現象の成り立ち、並行世界の構造といった不思議の部分をしっかり描くのは小説ならでは、の醍醐味だ。そして、この難解な理論構成、終盤の超複雑な展開についていける自分が、まだまだ頭が柔らかいかな、と感じる。平凡な真、孤独で凛とした珠美、宮部みゆきさんの描く中学生の魅力には毎回感動。終幕もさりげなくいい。
2018/07/23
ミヤッチ
かなり久しぶりの宮部みゆき。読みやすくて一気に読みました。おもしろかったです。
2018/07/16
まりも
分身を描くことで中に入り込むことが出来るヨーロッパの古城のデッサン。これはそのデッサンに閉じ込められた少女と現実の世界で起きた事件がクロスする物語。タイトルから明るいファンタジーかと思っていたが全然そんなことはなかった。最初は普通のファンタジーか?と思わせといて、そこから一気に普通のファンタジーには出来ないことをやっていく。その手法があまりにも見事すぎてあっという間に心を掴まれてしまった。現実に起きている問題とファンタジーの融合。宮部みゆきの描くファンタジーを思う存分堪能できる1冊でした。
2018/07/09
katsubek
近頃、自動運転と絡んでトロッコ問題が流行りだ。誰かを助けるために、他の誰かを犠牲にせねばならないという場面。さて、どう選択するか、という話である。個人の価値とか、選別とか、かなり恐い内容にまで発展する可能性を含む問題だ。本作を読んで思ったのが、そのトロッコ問題である。古くて新しいこの問題が、本作では意外な形で使われ、展開される。もう少し話が長くてもよいかも知れないとは思うが、さすがに、切れ味は抜群である。今年1冊目の登録、さて、今年はどんな本と出会えるか、楽しみだ。
2019/01/04
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