火の鳥10 太陽編(上) (角川文庫)
火の鳥10 太陽編(上) (角川文庫) / 感想・レビュー
活字スキー
この太陽編はまったくの初読なんだけど、遥かな古代から未来までを行きつ戻りつしながら紡がれてきた壮大無比なシリーズの、実質的な最終章と言ってよいのかな?日本史の授業でなんとなく聞き覚えのある白村江の戦いから幕を開けるが、巻頭カラーで死屍累々の戦場に切り落とされた首が500も並ぶロケットスタートぶりが半端ねえっす。そして捕らえられた百済の若者が生きたまま顔の皮を剥がれ狼の顔を被せられて文字通りの狼人間にされてしまうとか、並みのメンタルでは物語についていけない。
2019/06/03
阿部義彦
太陽編は初めて読みます。初出は角川の文芸誌「野性時代」でしたか。野性時代は縁が無かった雑誌でしたね。でも読ませますねー。狼の顔の皮を被った人間、そして狗族という設定が生きています。手塚治虫さんは変身譚がすごく多いですよね。リボンの騎士からしてそうですし、不思議なメルモもあるし、私も読み進んでいて、狼や犬からの連想で、バンパイヤやきりひと賛歌(モンモウ病)などを思い出してしまいました。この後中下とまだまだ続くので楽しみにしています。今回のトリビュートコミックは岡野玲子さんでした。
2018/11/03
gtn
神か仏かどちらが正しいかということが主題ではない。作者が言いたかったのは、信教の自由。その自由が失われると、憎しみ合い、殺し合いが始まる。信仰とは、人間のためにあるはずなのに。
2023/12/05
かもめ(甘き絶望)
久々の火の鳥シリーズ。第10巻。テーマは宗教の対立。壬申の乱を織り交ぜて作られたストーリー?歴史は苦手なのでよくわからない。大陸から仏教が渡ってくる。それを阻止しようとする倭国の民との攻防。仏教が異教のものとして排除する、という発想が自分にはなかった。解説で、関川夏央さんが、手塚作品における女性の印象についてふれており、手塚作品に出てくる女性はなんとなく陶器でつくったような印象で三島由紀夫のそれと似ているという。女性への憧憬と平行して、作者の中に女性への恐怖が底流しているとのこと。なんとなく、納得した。
2022/08/21
翔
壬申の乱の前後と近未来が舞台となっている太陽編の上巻。この一冊の中で描かれているのは宗教戦争と言えそう。元々日本では仏教やキリスト教ではなく、八百万の神という言葉があるくらい色々なものに神が宿っているという思想があったんですが、この太陽編ではその思想が仏教伝来により淘汰されていく様子が描かれています。実際にそんな感じだったのかどうかはわかりませんが、政治と宗教が結びつき、特定の宗教を強制することのヤバさっていうものがいくらか伝わるかと思います。これは戦前の体制を風刺しているのだと考えています。
2021/05/10
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