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里山奇談 めぐりゆく物語

里山奇談 めぐりゆく物語

里山奇談 めぐりゆく物語

作家
coco
日高トモキチ
玉川 数
出版社
KADOKAWA
発売日
2018-06-01
ISBN
9784041066690
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里山奇談 めぐりゆく物語 / 感想・レビュー

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HANA

怪談集なんだけど、読んでいるうちに穏やかな時間が過ぎていくように思えてくる。ここでの怪談というのは怖いものではなく、我々が失ってしまったものを思い出させるようなそんな話ばかり。特に自然や見えないものに対する畏れのようなものを強く思い出す。特に「底なし沼」や「路傍の神様」「空に逝く」「わらい女」や「ちゃぼさん」を読んでいて感じる寂寥感は何とも言えない。今はもう手の届かない過去や、見捨てられたのは我々か向こうなのか。読んでいて現在とは別の豊饒な何かがあったけど、それを失ってしまった郷愁を感じたものである。

2018/08/05

ままこ

里山奇談続編。蜻蛉がスィーと飛ぶ幻想的な装丁が美しい。「底なし沼」私が子供の頃にもそう噂される沼が近所にあったな。河童がいて尻子玉を取られるという沼もあった。そしてそれを信じてた。今はその沼どうなってるのかな。「歩く人」なんだかわからないものに対しては私も気付かないふりをしよう。「迎え犬」は微笑ましい。「はじまりの音」音を吸い込む音、命芽吹く音。清冽な話だった。「海の河童」先日読んだ梨木さん『海うそ』と通じるものがあった。↓

2018/09/06

mii22.

子供の頃祖母の家で体験した記憶のような郷愁を誘う物語。裏山、川、彼岸花、トンボ..。人里と山の境界は人の手が入ることにより変化しつつある。言い伝えやそれらに関する不思議な体験も変化し、喪われつつあるのは寂しいことだ。生きものは、いつかは生を終え土に還りまた新な命となり巡りめぐる。畏怖と安らぎをもたらす記憶のかけらたちも語り継がれ巡りめぐっていくことを願う。

2018/07/12

井月 奎(いづき けい)

里と山に境界線がないように、彼岸と此岸も緩やかにつながっているのではないでしょうか。子供の頃に感じたなんとはない怖さ、それは淡い境界線を知らずにまたいでいたのかもしれません。生き物はいつか死に、肉体は滅します。私は経験や思い出の伝播をこそ永遠の命と思っていますけれども、もしかしたら心は闇を通り彼岸に帰り、此岸にも来るのかもしれません。それはもとの姿、もとの個性ではないかもしれませんが命は魂を通して永遠なのかもしれません。水が海川を流れ、雲になり雨として地に降るように命もめぐりめぐっているのかもしれません。

2019/05/07

よこたん

“薄めたすみれ色をした空からの雨は、軽やかに、しゃら、しゃらと幾百幾千もの鈴振り鳴らす音立てて、葉を打ち奏で、はじまりを告げる。” かつて人は、こんな春のはじまりの音を待ちわびていたはずなのに、聴くどころか存在すらも忘れていくのだろう。怖いというより不可思議な体験談、言い伝えが途絶えようとしていることは、大事な何かをも同時に失ってしまうことだろう。聞き書き一つ一つの短さの中に、重い芯がある。山も川もどこか異界に繋がりやすい場所のようだ。あれ?っと思っても静かにやりすごすことが鉄則。あかん、絶対取り乱すわ。

2018/10/07

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