ゴルディアスの結び目 (角川文庫)
ゴルディアスの結び目 (角川文庫) / 感想・レビュー
HANA
短編集。内面外面を問わず中心となっているテーマは宇宙。解説にも書かれていたけど、純文学が人の心理だけを描き、ホラーも壮大な世界観を描くのがほぼ無くなった結果、それらが矮小とは言わないけどここまで宇宙というものに正面切って対峙しているのはSFというジャンルだけではなかろうか。ただ最近のSFのいい読者でない我が身が言うのもなんだが、学問の分野としての宇宙があまりにも深化した結果、最近は宇宙自体を描いた作品が少ないようにも思えるけど。問答や老いがそのまま宇宙スケールにシフトした作品集、夢中になって読みました。
2020/07/24
ざるこ
4連作。小松作品は短編でも凄まじい。島での穏やかな暮らし、オカルトチックな憑かれた女性、幻聴のような誰かとの会話、男女が絶頂を迎える時。そんな始まりの物語が最終的には壮大な宇宙論に昇華する。理解したとは言えないけど、そこに至るまでの惹きつけられる緻密な描写は息が詰まるほどえげつない。裏切った恋人を噛み殺し、心臓を食べたマリアの意識の中に侵入する表題作は特に気味の悪さと無限に広がる意識の世界が途方もなくて恐ろしい。人類は宇宙の子供だなと思ったけど最終話の展開がまた斬新。小松氏の飽くなき探究心に脱帽です。
2020/03/09
hit4papa
著者の博覧強記ぶりが遺憾なく発揮された4作品からなる短編集。世界観、いや宇宙観はいささかも古びていません。文学であり哲学であり、そしてSFです。精神科医が見た女性の心の闇「ゴルディアスの結び目」は、スリリングなメインストーリーを包み込むことで宇宙の広がりを感じさます。議論百出となる名作。指導者たるものの完璧な振る舞い「すぺる・むさぴえんすの冒険ーSPERM SAPIENS DUNAMANIの航海とその死ー」は、なんと人類存亡を賭けた壮大な大風呂敷。著者の主張をおいそれとは理解できないのが辛いところです。
2024/05/07
Shun
哲学的かつ文学性の高いSF作品集でした。ここには著者曰く、<「もっとも個人的な旅」の備忘録であり、それぞれ「出発」「渦」「難破」「孤島」に関する、ほんの一行ずつのメモ>とされる4篇が収録されており、この形容を理解するには読み込みが足りないと感じています。ただ自分が生まれる前に書かれたSF作品なのに文体に古さは感じないし、超自然についての描写や哲学的な語りに目を瞠ります。特に4つ目の「あなろぐ・らゔ」で描かれる生命や自然現象を前に感じるあの美しさは、著者の眼から覗いているような臨場感が素晴らしかったです。
2019/09/20
おすし
阿片中毒的グルグル感ホラー『岬にて』、濃厚ホラーだけどがっつりSFな世界観がド派手に展開する『ゴルディアスの結び目』、中盤まで何の話かなスピリチュアル系?というところがだんだんクリアになっていくと、これは!!スゴイイ…絶句。『すぺるむ・さぴえんすの冒険』、その続き?『あなろぐ・らゔ』平仮名のタイトルださくない(笑)って思ったけど意味があるのかも、損傷でデータがかすれてるような雰囲気…。4編それぞれ違うテイストで、ビターめなSFのワクワクさが最高潮な一冊でした。小松左京の短編集で今のところ一番好きかも!
2023/03/18
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