受難 (角川文庫)
受難 (角川文庫) / 感想・レビュー
のぶ
本作は2014年に韓国で起きた、セウォル号の沈没事故を中心に描いた作品。当時の杜撰な運行状況が詳細に表されていて、思わず引き込まれた。あの悲劇が人災だったことがよく分かる。ただ、それだけではノンフィクションノベルに終わってしまうところだが、帚木さんはそれにiPS細胞に3Dプリンターを利用した人間のレプリカを、作成する物語を絡めている。こちらはSF的な印象が払拭できないが、帚木さんが医師なので、現実なのかもしれない。どちらの話も興味深く読んだが、双方をマッチングさせるには、やや無理があるとも感じられた。
2019/04/23
カブ
IPS細胞と3Dプリンターで人のレプリカを作るなんてSFのような始まりですが、物語は実際に韓国で起きたフェリー沈没事故とからめてのサスペンスのような展開になっています。人のレプリカのくだりは、想像の世界というより、もしかしたら現実になりそうな気がして怖さすら感じた。
2020/03/23
James Hayashi
14年に起きた韓国セウォル号沈没事件をモチーフにし、iPS細胞で生き返った女性を交えた作品。「悲素」で味わえた事件の真髄を描き出す作風は秀逸である。セウォル号がいかに汚辱にまみれていたのか理解できる。軍、宗教団体、政界との癒着、賄賂。それ故、利益重視で仕込まれた改造、見逃された過積載、不十分な救護の海洋警察、責任放棄で不馴れな船長と乗組員。明らかな人災である。また船会社オーナーは巨額な資金を持ち、事件後失踪、自殺遺体発見に至る(本人であるか怪しい)。転じて医療関連の話しは再生医療の可能性に触れるが、→
2020/05/26
Nao Ko
久々の帚木さん、「水神」とか「逃亡」とか凄く面白くて大好きなんですが…う~ん。いまいちでした。なかなか進まず、退屈なシーンも最後まで読めばきっと何かしらの意味があるはずと思い読み進めましたが…IPS細胞での蘇りは興味深かったけど、世月号の真相もはっきりしないままで…ふたつをつなぐ真実なんて、読まなくてもわかっちゃったし~春花の日常とおじいちゃんとの旅行シーンばかりで退屈でした。唯一心に残ったのはモンドールチーズ、食べてみたいわ♪
2019/04/28
matsu
帚木蓬生氏は2作目の俺だ。出だしはSF。あとは、17歳の少女の日常。祖父と掛かり付け医療チームの面々との日常。優しい人々と美しい自然に囲まれた素晴らしい日常。でもこれって、きっと悲しい話なんだろうな、と思いながら読んでいた俺だが、やっぱり悲しい話。予想とは少し違っていたのだけれど。持って行き先の無い悲しさと怒りの入り混じった読後をどう治めればいいのか。無理だ。治まらない。治まらない読後を共有すべく、多くの貴兄貴女にも是非読んで欲しいと、切々と思う俺であるのだ。前日譚があるようだ。読んでみたい俺だ。
2020/02/25
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