孤篷のひと (角川文庫)
孤篷のひと (角川文庫) / 感想・レビュー
佐々陽太朗(K.Tsubota)
恥ずかしながら私は小堀政一(遠州)という人物をよく知りませんでした。山田芳裕氏が古田織部を描いた漫画『へうげもの』の登場人物として知っている程度です。 本書を読んで、「きれいさび」と言われる遠州の茶が少し分かった気がします。そして融通無碍ともいえる遠州の生き方に感銘を受けました。生き方でいえば、千利休が自分の求める美にこだわり豊臣秀吉から死を賜ったこと、同じく己の信じる美にこだわるへうげもの古田織部が徳川秀忠から死を賜ったことをを見れば、遠州の生き方はしなやかだと見える。
2021/05/16
のり
千利休・古田織部を師と仰ぎ、茶の道を邁進する「小堀遠州」。世の流れもあるが稀代の二人とはまた別の志で名だたる権力者を魅了する事に。政を左右するくらいの地位にもあたるが、遠州は泰平の世を願った。諸説はあるが利休も織部も我が強すぎた。激動の乱世を生き抜く者の術だったかも知れないが…世渡りといっては語弊がある遠州は名だたる者から心から信頼されていたと思う。
2019/09/29
優希
しみじみとした作品でした。小堀遠州の生涯を描いた連作短編集。前々から庭に興味がありましたが、更に庭に興味を持ちました。
2021/03/25
みやび
小堀遠州と言えば作庭家のイメージが強いのですが、千利休・古田織部を師として名を馳せた茶人でもありました。その遠州が、茶を通して人の心のあり方や生き方を見つめ、利休や織部とは違った茶の道を築いていく様が、静かに描かれていきます。藤堂高虎や伊達政宗などとも顔を合わせた遠州の茶には、戦国から江戸に生きた人々の心が宿っているように思う。小堀遠州の茶は「武士の茶」だと紅茶教室で少し習いましたが、その意味が解ったような気がしました。全体的に静謐で穏やかな文体が、遠州の生き様によく合っていて心に沁みます。
2020/02/02
niisun
小堀遠州は大学時代に“庭園史”の授業で詳しく学びました。当時所属していた日本庭園研究会の京都合宿では、この作品にも登場する南禅寺の方丈庭園、金地院、桂離宮などをじっくりと巡りました。ただその頃覚えたのは名前と庭の特徴くらい。その後の出会いは漫画『へうげもの』。織部自刃までの時代ですが、作介(幼名)が個性豊かに描かれていて、私の中ではその印象で固まってしまいました。葉室麟版の小堀は、静かな佇まいを見せつつも、豪傑な武将達や老獪な公家衆相手に“生きるもののための茶”で見事に渡り合った好人物として描かれてます。
2019/10/28
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