夜に啼く鳥は (角川文庫)
夜に啼く鳥は (角川文庫) / 感想・レビュー
さてさて
死のことを考えることは恐ろしいことです。そして今の人生をいつまでも生きたい、そんな風に思いが集約されるのはある意味自然な感情の成り行きなのだと思います。しかし、それが無限に続くものだとしたら人はそこにどんな思いを抱くのでしょうか?『不老不死』の躰を保つことができたなら…というファンタジーな物語には、一方でリアルなまでの”生”を感じさせてくれる人の苦悩が描かれていました。印象的なまでの昔話な物語を起点に現代を生きる人々の生き様を映し取ったこの作品。千早さんの筆の力をまざまざと見せつけられた圧巻の一作でした。
2021/12/29
相田うえお
★★☆☆☆21029【夜に啼く鳥は (千早 茜さん)k】初読み作家さん。始めは大人のお伽話の様な感覚と慣れない文体に多少の違和感を感じたんですけど、読み進むにつれてその感覚が心地良さになってきました。っていうか、この文体は1話目だけでした(笑)。本作品、不老不死モチーフ。『不老:肉体は若いままでも心は老いる』なるほどねぇ。『不死:手術でメスを入れても片っ端から塞がっていく』こりゃ困る〜っていうか不死だから手術不要!さらには死なないから生殖の必要無し=生殖器官無し!まあ、びっくりな話なんですけど、ちと暗い。
2021/03/28
ふう
わたしの年代には「ポーの一族」を思い起こさせる、不思議な世界のもの悲しさがただよう作品でした。不老不死。誰もが手に入れたくなるその力は、見方を変えれば、いつも自分だけが愛する人や時の流れに取り残されていく「孤独」と隣り合わせで、喜びよりも虚しさの方が強くなっていくものなのかもしれません。読み進めるほどに引き込まれていくおもしろさがありましたが、一番好きなのは最後の章。愛しても、その愛にまた取り残されていく悲しみに、つい感情移入してしまいました。とびこんでいけばいいのに、と。
2023/07/30
佐島楓
不老不死を扱う作品はままある。本作もそんな作品のひとつ。死を得られないものたちの悲しみと苦しみを抱える人間との交流というテーマはよかったと思う。水が流れるような美しさと残酷さの同居。痛々しい。
2019/06/04
じょんじょん
千早茜さん『男ともだち』『西洋菓子店プティフール』に続いて三作め。そして三作とも雰囲気も文体も違う感じですね。不老不死の一族にまつわるストーリー、恩田陸さんの『常野物語』のような特殊能力をもつ一族話かと思って読み始めたけど、少し違いました。短編連作の読みはじめはちょっと違和感を持ちましたが、読み進むうちに、どんどん妖しくも不思議な黒ファンタジーの世界に曳き込まれていきました。ありえない世界がありえるかもと思えるくらいダークでリアル、そしてピュアな作品でした。主人公「御先」の心の闇はどれほど深いのでしょうか
2019/06/19
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