ゆめこ縮緬 (角川文庫)
ゆめこ縮緬 (角川文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
皆川さんの短編集です。いままで長編ばかり読んできたのですが、この短篇集は傑作ぞろいでした。「文月の使者」から表題作までの8作すべて満足です。皆川さんの短編もいいものがあるのですね。解説、解題、久世さんの随想などが収められていて非常に楽しめました。
2021/06/19
rico
明け切れない梅雨、湿気を含んだ生ぬるい風の吹く午後、皆川博子さんの流麗な文章に誘われ、踏み込んでしまった8つの世界。生者と死者、人と人ではないもの、夢と現、現在と過去と未来。あらゆるものが混然となり、幻惑される。暗闇に浮かび上がる白い肌に一筋の赤い血。何処かで蝶が羽をゆらめかせてはいなかったか。ここではないどこかに魂が連れ去られる感覚。眩暈。私はどこにいるの?本を閉じた時「ああ、戻って来れた」と安堵のため息。でもまたいつか呼ばれそうで、ちょっと怖い。今度は帰ってこれるのだろうか。
2020/07/27
じいじ
皆川博子へ初挑戦。著者のヒット作の復刻版だそうです。とてもおしゃれな装丁。・・・残念ながら道半ば(5合目あたり)で、リタイア、ギブアップいたします。幻想小説、怪異的…な内容が、肌に合わないのだろうと思います。これ一冊での結論は早計ですが、硬い頭の爺ィには、皆川博子文学作品は難解でした。
2019/10/27
buchipanda3
蠱惑的という表現がぴったりと思えた短編集。各篇の題名からして妖しげで心惹かれる。そして物語の冒頭の一文から、ぐわっと掴まれる。「指は、あげましたよ」「狂(たぶ)れた、と思う」。中身の方では、前衛的で退廃的な趣きを感じさせる古典文学のような美しい世界観に油断していると、そのなまめかしさに足元をすくわれてしまいそう。生と死をぼやかした物語は不穏さと軽妙さが混在。そこに挿し込まれるゾクッとする表現が残る。ひょいと急に現れる人間の背徳性には呆然となるも離れられない。これはどの篇も何度でも味わいたい作品ばかりだ。
2019/10/12
★Masako★
★★★★ 一篇読む毎に大きなため息が漏れる。皆川さんの幻想的な作品を読むといつもそうだが、今作は特に濃厚で濃密。大正から昭和初期を舞台にしたノスタルジックで妖艶、毒気溢れる幻想怪異譚8篇。貴方は誰?私は何者?生者か死人か、此岸か彼岸か…いや夢か現実か? 美しい言葉や文章に誘い込まれ引っ張り回され、あちこちと。最後はため息と共にへたり込む。さて、今わたしは何処にいる? いつかまたじっくり再読してみたい♪
2020/05/12
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